年収1000万プレーヤーの転職(1) 職種・職業・仕事別の状況

業績連動かマネジメント規模に応じた役職給

年収1000万円という水準は、一般的な昇進で得られる待遇としてはほぼ最高水準と言えます。これ以上の年収水準となると、企業のトップマネジメントや特殊なスキルを前提とする別カテゴリーの領域となります。

1000万クラスの職種は、営業系職種のように売上成果と連動する業績給の積み上げで達成する割合の大きい職種と、多人数の組織を牽引するマネジメント規模の大きな製品系職種が主流の2大ポジションです。

よりハイクラスになるほど会社の業績と連動した評価になる傾向が強いため、年収には経済動向の影響もあり見通しづらい部分もあります。

この2系統は「ライン職種」と呼ばれ、企業の売上とビジネスを支える屋台骨となっています。管理部門などの「スタッフ職種」にも1000万プレーヤーはいますが、ポジション数で見ると相対的に人数は少ない職種になります。

また、俗に「経理畑の社長が2代つづくと会社が傾く」と言われるように、年収1000万を超える上級管理職も、基本線としてはラインの部長職経験者から選抜されます。

1000万プレーヤーは総合力が必要。分析力だけでは不足

これらの職種マネージャーは、各企業の主役として認められた人材です。

キャリアステップとしての800万クラスの動向については、 年収800万プレーヤーになれる人・なれない人 職種・職業別の状況 で特集しています。主要な組織人事はトップマネジメントに近いレベルで決定されるため、多くの企業では単に出身の大学や学歴で評価されるということはありません。

中堅クラス以上のマネージャーは全社の経営方針にしたがった日常業務の範囲では、幅広い裁量をもって仕事にあたるケースが多くみられます。

裁量をもって自律的に活動するためには、的確な状況判断力を身につけていることが必要になります。数十人以上の部下をマネジメントすることも多く、プレーヤーとしての自分の能力を生かす場面は大きく減ります。状況判断は若手マネージャーの報告や、チーム別の進捗レポートなどを基礎情報として活用します。

10人程度のチームレベルでは、商談数や開発マイルストーンなどKPIに着目した分析能力があれば管理できますが、部長級のマネジメントになると内部の複雑性が増すだけでなく、外部の変化に対応する必要もあるため、もはや分析力だけでは足りません。

いくつかの主要な変動要因の得失を同時に考慮する総合判断力が問われます。それまでのキャリアで、強い点または弱い点の限定的なポイントに注目する仕事の進め方は身についていますが、部長クラスでは全体に着目することが求められ、1000万級を継続的に担えるかどうかの大きな分かれ道となります。

経営マネジメントで有名なミンツバーグ教授は、マネージャーの資質を「サイエンス」「アート」「クラフト」に分類しています。

サイエンスは分析力を基礎とする客観認識ですが、それ以外にも全体の構造を直観的な美観でデザインするアート能力や、実地の調整のなかでバランスを見出す職人的なクラフトマンシップも必要と指摘しています。

ミニ経営者として正義感も必要

営業系のリーダーは機能が明確なため、営業組織の役員昇進に向けた選抜は比較的分かりやすいストーリーと言えます。販売領域の分担がそのまま会社の一部になります。

一方で、多くの企業で製品系のマネージャーも製品別に会社を分担するような組織設計になっています。たとえば耐久消費財メーカーでは製品企画部長、消費財メーカーではマーケティングマネージャー、IT企業では開発部長/技術部長、流通業ではマーチャンダイザーといった職種が各企業の主力商品を取り扱う責任者です。

いずれの部門も、営業成績の達成や、商品の成功が部門を支える原動力となるため、仲間のために結果を出す正義感をもった人物が抜擢される傾向があります。

状況判断力を問われる専門職もある

このように、職種の観点で分類すると企業のライン部署を中心とするマネージャーが中核的な1000万プレーヤーになっています。

これ以外の職種としては、稀少スキルを評価されている職種があります。とくに、業界トップクラスの優れた状況判断力は努力だけでは身につかない面もあり、高い評価を得ている専門職があります。

このような例として、マーケティング分野のリサーチャーや、金融トレーダー、シンクタンクのアナリストなどが挙げられます。多変数の中から意味のある傾向を読み取るインサイト(洞察力)が資質の基礎になっていて、これらの職種でも単なる分析力にとどまらない総合判断力が重要と言えます。

参考:年収1000万プレーヤーの家計に関する適切な課題意識

多少余談めいた話になりますが、「年収1000万」はひとつの分かりやすい指標として関心の高いテーマです。

サラリーマン全体から見れば夢のような高収入に見えるということもあって「どのような生活をしているの?」という質問はよく聞かれます。

結論としては、各個人の消費スタイルは貯蓄性向も含めて多様であり、年収1000万を稼いでいるからこのような生活をしている、という答えは特にありません。むしろ生活については、結婚や出産といったライフステージにより、また人ごとの嗜好とライフスタイルにより決まります。

ただし、ひとつ誤解されているのは「税金が高くなって手取りが減るため働き損」というイメージを持たれている点です。日本の所得税は累進課税であり額面収入が大きくなるほど税率・税額が高くなる傾向があるのは確かです。

ただ、1000万円水準は最高税率55%からはほど遠く、所得金額は742万円(給与控除220万円・基礎控除38万円)となり限界税率は33%(所得税率23%・住民税率10%。仕上がりの実効税率はさらに低くなります)のレンジになります。

限界税率は、年収530万程度で30%のレンジに到達するため、中堅以上の収入帯では税率に通念ほどの大きな差はないことが分かります。社会保険料も含めて控除される総額は確かに増えますが、それ以上に手取りが増える収入帯であることは確かです。

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年収1000万という水準を理解する第1のポイントとして「高い役職ほど会社の業績と連動した給与設計になっている」という大前提があります。

会社が存続するためには黒字であることが必要です。

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ビジネスの立上げ場面で必要な事業企画責任者や、事業を推進していくためのプロジェクトマネージャー、さらに人員を増強した際に必要となるチームマネジメントができる人材など、様々な役割の人材を常に必要としています。

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■その5-メーカー編

メーカーの昇給は、一般的に年功序列を維持しています。これは、商品開発だけでなく、先端技術の研究開発投資や工場の生産技術も商品力の源泉となっていることや、幅広い営業網によるスケールの確保など、想像を絶するほどの人数の努力が結集した成果が業績を生み出している、という考え方があるからです。

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■その6-外資編

外資系企業は全般的に給与水準が高く、若くして1000万円を超える収入を得る人の数が多いだけでなく、1500万〜2000万程度の水準となるような高所得者もいることで知られています。

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社長をはじめとする経営者は企業トップエグゼクティブを務めることもあり、原則として報酬も最高水準に設定しているケースが大多数といえます。

スタートアップや赤字企業をのぞけば、多くの企業で社長・役員の報酬は1000万円を大きく上回っている

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■その9-起業家編

若くして年収1000万超を目指す道のひとつに独立起業があります。まったく簡単ではありませんが、給与水準が上がりにくい市場環境では有力な選択肢のひとつとなります。

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