年収1000万プレーヤーへの転職(7) IT・ソフトウェア業界編

じつは異業種が集まっているIT業界

まず最初に理解しておくべきことは、IT業界の中にいくつかの業種・業態があることです。IT業界の中で一番大きいのは、大企業向けのシステム開発分野で主な職種はシステムエンジニア(SE)です。他に、成長産業であるWebサービス業界や、ソーシャルアプリ業界があり、場合によってはWebマーケティング業界もIT分野と見られている場合もあります。

年収1000万システムエンジニアの実状

まず最大勢力である狭義のIT業界ですが、年収1000万を超えるSEは、割合としては少なくとも人数は比較的多い業界です。

SEの仕事は、大人数のチームで企業のニーズに合わせた情報システムを開発することです。もっとも大規模な案件では数千人月に達するものもあり、三菱東京UFJ銀行の合併に伴うシステム統合は古代エジプトのピラミッド建設に例えられるほどでした。

そのためハイクラスのSEの主な役割は、チームマネジメントや外注エンジニア管理となります。上級エンジニアに必要な資質は 年収1000万プレーヤーの実像(3) 技術職編 でくわしく解説しているとおりですが、SEの場合はマーケティング力は必要ない一方で、卓越したプロマネ力と設計力が問われます。

エンジニアといえばプログラミング、という印象が強いかもしれませんが、業界全体としては純粋なプログラマーは供給過剰気味です。昇進の観点では、資格やコーディングスキルよりはむしろ対人的なポータブルスキルの方が評価材料になります。

外資、メーカー、SIerなど業種ごとに異なる有望性

職種としてのSEの仕事はどの企業でも似たり寄ったりですが、業種別にみると各企業の実力値はまちまちです。

国内IT業界で売上規模が大きいプレーヤーは「総合ITベンダー」やITゼネコンとも呼ばれる富士通・日立・NECです。これらの企業は、1960年代にコンピュータ産業が生まれた頃からメインフレームというハードウェアを手がけていたことから、安定的な顧客基盤を持っています。

近年では、高価な独自ハードウェアの需要が減っていることから従来ほどの収益性はなくなりましたが、24時間365日止められないシステムに関する技術力を持っているため、いま市場シェアの高い企業ほど生き残っていく可能性は高いと考えられます。

ITはアメリカ発の技術が主流ということもあり、外資系企業も有力な勢力といえます。

総合ITベンダーのジャンルでは、日本アイビーエムや日本オラクル、日本HPなどがあり、ほかにもソフトウェア系でSAPやマイクロソフト、セールスフォースドットコム、特殊ハードのEMC、シスコシステムズ、コンサルティングのアクセンチュアなど専業プレーヤーがそれぞれ高い収益性を確保しています。

これらの企業については、IT業界のカテゴリーというよりも 年収1000万プレーヤーの実像(6) 外資編 で解説した状況に近いと考えられます。

IT業界のなかで難しい立場にあるのが、その他のシステムインテグレータ(SIer)です。商社系や独立系と言われる企業がこのグループに当てはまります。

SIerは特定の自社製品を持たず、純粋にSE集団として顧客システムを開発する業態ですが、構造不況により市場成長が止まり統廃合が進んでいます。このあたりの事情は銀行や保険などの金融業界と似ています。たとえばSCSとCSKの合併によりSCSKが誕生するなど企業ネーミングこそフィット感がありますが、産業ライフサイクルの点から見ると終盤というのが実情で、市場シェアの低い企業ほど生き残りは難しくなります。

意外にIT業界と互換性のないWeb業界

IT業界のなかで成長を続けている分野が、Webサービスやソーシャルアプリなど消費者向けインターネット関連の分野です。

ただしWebは従来のIT業界とは独立で発展してきた傾向が強く、キャリアの観点からみると意外にWeb業界とIT業界の互換性は高くありません。業界規模のわりにSEからWebに転身するエンジニアはそう多くないと言えます。

Web業界は20代・30代の若手が立ち上げてきたこともあり、業界としての年収水準は幹部層をのぞくとIT業界のなかでは低い傾向があります。

例外は楽天で、楽天についてはWebというよりもビジネスサービス業態の性格が強い企業と見た方が良いでしょう。

IT業界は1960年代から始まっていてすでに組織構成が1周り以上のサイクルを完了しているため職種プロフィールが確立しているのに対して、Web業界はまだ15年ほどしか経過していないため今後どうなるのかは未知な面が多くあります。

DeNAやグリー、Mixiなどの勝ち組ソーシャル企業は今後の投資しだいで業態が変わっていくと考えられるため、現在の姿ではなく今後の新規ビジネスの動向に注目すべきです。

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