年収800万プレーヤーの飛躍(2) 業種・業界別の状況

800万円プレーヤーの業界別状況を年収ランキングから読む

年収800万円という水準から見た業界動向は、IR上開示されている平均年収がある程度参考になります。 1000万円プレーヤー ともなると数が少なくなり統計的な傾向と合わない面がありますが、800万円級のポジションはミドルマネジメント層としては珍しくない待遇といえます。

上場企業の平均年収ランキングによれば、上位500位程度の水準が年収約710万円、平均年齢は40歳前後です(東洋経済調べ)。平均年齢については、若手から50代まである程度バランス良く世代が構成されている企業では40歳前後になります。

平均年収はより母数の多い若手社員の水準を反映する傾向があるため、先の指標では710万円という水準は40歳時ではなく30代の実態を表していると考えられます。30代半ばまでに年収800万円プレーヤーを輩出する企業はより上位の企業ということになり、200社程度が該当するとみられます。

業種・業界別の動向

業界別では、金融/都市銀行・投資ファンド・コンサルティング・マスメディア/広告・ソフトウェア/IT・通信・総合商社・製薬・資源/化学・不動産デベロッパーなどの業界が平均年収の上位にランクインしており、30代半ばで年収800万水準に到達しやすい業界といえます。

次点として、電機/自動車/光学メーカー・食品・電力・精密機器・電鉄・地方銀行などが続きます。これらの業界では800万円水準は30代後半以降か、または職種により差がある状況と考えられます。

そして、飲食/宿泊/その他サービス、教育、人材、物流、流通/小売/ショップ、農林水産などはオペレーション部門が含まれるため平均が低くなると考えられ、ランク外となっています。昇給余地の大きい役職が経営・幹部層中心の二階建て構造になっていると見られます。

また、同じメーカーの中でもキーエンスが突出して高年収を持続的に達成していることは有名です。

けっきょくのところ、商品の独自性や規制産業、資源の寡占などによるマーケット別の収益性と給与水準が連動しており、さらにシェアの上位から順にランキングが並んでいるという傾向が読みとれます。

(なお、年収1000万プレーヤーの業界動向については、 年収1000万プレーヤーへの転職(2) 業種・業界別の状況 を参照してください)

「民間給与実態調査」は区分がやや異なりますが、年収800万円超の人の構成比率が高い業界として電気・ガス系企業(35.4%)、金融・保険(24.1%)、情報・通信(18.6%)、コンサルティング系を含む専門・技術サービス(15.9%)と続きます。逆に最下位は宿泊・飲食業で1.5%となっています。(平成25年分 国税庁調べ)

企業競争はチーム戦であり、個人の努力というよりも過去の企業努力も含めた営業資産によって雇用と待遇が守られているという構造があります。

長期的な水準は業界の収益性から決まる

産業別の年収帯は、ある程度自明のようにも思えますが、長期的な視点で考えると普段は気付きにくいことが見えてきます。

それは、産業ライフサイクルの影響で業界の入れ替わりがあるということです。

明日の給与水準は、将来的な業界の収益性に左右されます。

たとえば電機メーカーはもともと基幹産業といわれ、1990年代までは多くの企業がトップグループの座を確保していましたが、いまでは脱落する企業が増えてきています。一方で、不要論が繰り返し登場する総合商社は、景況感にも左右されますが事業ポートフォリオが分散していることから時代の変化に対応できていると言えます。

また、このリストの中で考えるとランキングの入れ替わりだけに注目しがちですが、より重要なポイントは市場競争はグローバル環境の争いになっている、ということです。

ある産業が、成長産業から成熟産業に移行すると、発展途上国が有力な競争力を身につけてきます。ある新製品を考えたとき、当初は高い値段で売れていたものがいずれ誰もが持っている状況になると「より安く」が重視されるようになるのです。現実問題として、ハイテク産業を含めてインド・中国の産業成長の影響で日本のビジネスが縮小している面はあります。

輸出産業が打撃をうけると内需産業にも波及します。リーマンショック時にはIT市場、人材市場も大きく縮小しました。

グローバル競争の先行きは見通しづらいものの、その影響からは逃れられません。

視野が狭いことが危険な時代に

職業キャリアは30年以上のスパンで考える必要があるため、目につきがちな数年単位の好況不況だけでなく、クズネッツ・サイクルやコンドラチェフ・サイクルといった数十年スパンの大きな景気変動の影響も受けます。

日本の場合は、人口ボーナスの高度成長期から、少子化・高齢化により急激に人口オーナスの時代に切り替わったことも重なって、あまりの変化の大きさに産業転換をうまく認識できていない面があります。

日本人はパーソナリティの認識が弱い国民性があり、職業的にはまず会社があって部署があって自分がある、という考え方を持つ傾向があります。

これは欧米とは逆の発想で、わかりやすい例として名刺の肩書きの記載順にもあらわれています。

ただ、誰もが薄々感じているとおり、終身雇用は一時の特殊な慣行であるため、視野が狭く会社に依存している状態は危険です。

一つひとつのステップで能力を身につけ、異業種も含めた可能性をつねに考えておくことがキャリア・サバイバルの要点となります。