ビッグ・ファイブ(Big5,ビッグ5)とは?その性格モデル(特性5因子)を徹底解説&診断ツールの紹介

ビッグ・ファイブ(Big5または、ビッグ5と言われます。)は、性格を表す特性5因子で、かんたんに言うと「個性は5種類の軸で説明できる」という学説です。

ビッグファイブとは?その流れを知る

心理学の性格研究では、長年にわたって様々な性格類型や特性が提案されてきましたが、お互いに別物であり科学にならない、という難問を長らく抱えていました。

1980年代までの、キャッテルやオールポートらが提唱してきた「個人特性」、「共通特性」をもとに、人間という動物のもつ「根源的かつ普遍的な性格の判定」を、1990年代にゴールドバーグが大規模大変量解析をもとに5つの分類に種別したものが、ビッグ・ファイブ(The Big-Five factor structure)です。
他の研究者による独立した分析でも類似の結果が得られたことから、ようやく性格の科学的な記述は、ビッグ・ファイブにほぼ統一されたのです。

性格分類によくある誤解と非科学

ビッグ・ファイブの功績や性格・個性を適切に理解するうえで、血液型性格分類について知ると理解が深まります。
ABO血液型性格分類は「日本だけで流行した擬科学」で[1]、テレビ番組で繰り返し放映されたことで、広く刷り込まれてしまった社会現象です。

ビッグ・ファイブ登場に至る性格分析の近代化により、血液型性格分類もまた多くのサンプルにもとづいて統計的に検証され、性格と無関係であることが確認されています[2]
「A型だから少しは真面目なところがあるよね」という印象を持ってしまうのは誤りで、A型の集団の真面目さが何か底上げされているということは一切ありません。

このように性格研究では、構造的因果関係がないのにもっともらしく見える説(占い師のトーク術「バーナム効果」として知られる)や、特殊な人物にしか当てはまらない”類型論”を卒業し、「もっとも有力な記述モデル」[1]として特性論に基づくビッグ・ファイブ・モデルに到達した経緯があります。

特性5因子とは


ビッグ・ファイブ・モデルの研究を通じて、人の個性は、外向性・協調性・良識性・情緒安定性・知的好奇心の組み合わせから成り立っていることが明らかになっています。
それぞれの特性は大小の変量を持っており、5次元空間になっています。これはちょうど、国語/数学/理科/社会/英語の5科目総合テストで「国語は得意だが、英語は不得意。他3科目は平均的」といった表現になるのと似ています。

また、5軸を表す言葉は研究者ごとに揺れがあります。これは、BIG5で発見された構造と、私たちが日常的に性格を表現している「優しさ」「嫉妬深さ」といった言葉との間のズレを反映しています。

言い換えれば、私たちがとらえている”個性”は複数のビッグ・ファイブ因子を合成したものを指しており、ビッグ・ファイブは性格をより直接測る尺度と言えます。

このように、言語構造じたいが性格・個性を間接的に評価するものであるため、日常の会話の中で人物評や性格分析をしてももう一つ的確に捉えようがなく、どんなによく理解しているつもりでもズレが生じてしまうものなのです。

ビッグ・ファイブに良い性格はあるか?

先ほど学力テストの例を挙げましたが、ビッグ・ファイブのスコアがテストと異なる最大の点は、得点が高いほど良いわけではない、ということです。

たとえば、協調性。協調性が高いことは日本では何となくポジティブにとらえられがちです。しかし協調性が高い人は、文字通り対人における愛着心が強い一方で、自分なりの独立した考えを持つことに難がある、という性質とセットになっています。

ある特性が強く偏っている人は、良くも悪くもその影響を強く受けていて、さまざまな形態で”個性的”になります。

また、一般的な「個性とは何か?」という印象と同様、心理学のパーソナリティもまた、その人の持っている安定的な構造ととらえられています。
デメリットだけ打ち消して成長する、という発想はないのです。

ビッグ・ファイブを活用する

このように、ビッグ・ファイブのスコアに良し悪しはありませんが、向き不向きはあります。

たとえば、仕事の業績とBIG5に関する研究分野は関心が高く、複数の職種で良識性がもっとも仕事のパフォーマンスと相関していることが知られています(ただし全てを左右するほどの影響力ではありません)。

実際には仕事に必要な資質は職種ごとに様々であり、アカデミックな研究では分野横断的な仕事を対象としたことで効果を打ち消し合っている面があると考えられます。

ビッグ・ファイブの性格記述には予測力があるため、個別の仕事に重要な性格的資質を特定することで、「苦手なことをやらされている」といった仕事上のミスマッチを減らせます。

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このように個性・性格を客観的に記述できるフレームワークがビッグ・ファイブに定まったことで、自分に適した道を探しやすくなったり、ビジネス上の実行リスクを制御するといった可能性が拓けてきたのです。

ビッグ・ファイブの性格5因子、良識性・情緒安定性・知的好奇心・外向性・協調性の概要をそれぞれ紹介します。

1:Big5の「良識性」は節制に関わる

良識性(conscientiousness)は、短期的な衝動や欲よりも長期的・合理的な利益を優先する節度の度合いを測る性格軸です。

良識性の高い人は、責任感があり、誠実で、計画性を持ち、勤勉です。逆に良識性の低い人は、無責任で衝動性が強く、場当たり的で、あきらめがちな面が強く出ます。

良識性を個性ととらえる見方は、いくつかの伝統的な考え方を塗り替えます。たとえば、性善説・性悪説はいずれも適切ではなく、実際には多様であるということが分かります(なお善悪については、協調性も関係します)。
また「人間は弱い生き物だから」という紋切り型も簡略化し過ぎた捉え方です。

2:不安を生み出す傾向と連動する「情緒安定性」

情緒安定性は、神経症傾向(neuroticism)とも呼ばれ、不安を引きずる度合いを示します。
名称と内容は比較的一致していて、穏やか←→感情的、楽観←→不安といった軸で分布します。

かつて、ヒステリー・神経症は病気の一種でしたが、分類の変遷の中で、不安症やうつ病などに細分化された経緯があります。

神経症傾向の強い人は、同じストレッサーに対してより強い不安・ストレスを受けます。
仕事は持続的なストレス源であるため、長期的にみると情緒安定性の低い人は仕事が続かず辞めているという見方があります[3]

3:「知的好奇心」は空想性・保守性の軸

知的好奇心は「経験への開放性」(openness to experience)とも言われ、ビッグ・ファイブの中では一番とらえにくい性格尺度と言えます。

知的好奇心の高い人は、新しい経験に対してオープンであり、知的で、連想が広がりやすい傾向があります。逆に知的好奇心が低い人は、変化を好まず、感覚的であり、大雑把でときに頑固で、権威に従順な面があります。

知的好奇心の度合いは、コミュニケーション上の情報量の違いを生むため、高低差の大きい人の組み合わせは相性が悪く、お互いのスタイルに不満を持ちがちです。

知的好奇心が著しく高い人は連想が止まらず、言葉としてのまとまりを欠くため周囲から見ると意味不明になることもあります。
また、オープンであるということは、自分と環境の境界意識が薄いということでもあります。フロー状態(チクセントミハイが提唱した没入感覚)へ入りやすいという研究もある一方で、幻聴に結びつきやすいとも言われています。

4:「外向性」は活発さの度合い

外向性(Extraversion)は、活動性や元気の良さを表します。
外向性の高い人は見た目にも分かりやすく、しゃべり続けたり活発に動き回ったりする傾向が強く出ます。逆に外向性が低い人は、いわゆる内向的なプロフィールとなり、引っ込み思案で無口で身体活動も低調です。

また、外向性の高い人は社交関係では相手の気をひくことに関心を持ち、より支配的な立場を取りたがります。

5:「協調性」は集団に埋没する度合い

協調性(Agreebleness)は、一般的な意味の協調性と関係がありますがニュアンスはやや異なります。

ビッグ・ファイブの協調性は、集団と一体である度合いを示しており、また同時に自分を見失う度合いでもあります。
協調性の高い人は、親切で気前が良く、だまされやすい一方で、自分なりの考えを持ちにくくもあります。
協調性の低い人は、利己的で非協力的ですが、集団と距離を置いて自分の考えを持つことは得意です。

結論:各因子の水準が近い人は似たような反応を示す

性格の似ている人は同じような状況でとる挙動も似ていますが、一方で、一人ひとり微妙な違いを感じる部分もあります。
これは、性格を表す日常的な形容詞がビッグ・ファイブそのものではなく複合的なことばであるためです。私たちの思考は言葉の構造に強く影響を受けています。

Big5で性格を記述したとき、たとえば同レベルの神経症傾向の人が不安を感じる度合いはよく似ています。
また、情報量に対する拒絶感(開放性の逆の度合い)も知的好奇心の水準で分類すると似たもの同士になります。

脳神経科学や、遺伝の研究分野でも、ビッグ・ファイブとの関連で性格との相関研究が進んでいます。
それらは、ビッグ・ファイブの5因子に直接対応する脳のパーツがあるのではないか、そして遺伝子の特定の領域に対応するのではないか、という観点で分析しているものが多くあります。まだ、確定的なメカニズムが断言されている段階ではないものの、性格5因子は脳の特定機能と関連がある、とする個別の報告は継続的に出てきています。

もとはと言えば「性格」という概念は、人の特徴的・安定的な言動の様子を表現するものでしたが、人が表面的にとらえていた性格構造は、個々人の脳の特徴によって実際に存在しているもののようだ、ということが見えてきています。

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参考文献)

[1] 主要5因子適性検査ハンドブック(村上信寛/村上千恵子)
[2] 血液型と性格の無関連性(縄田健悟、心理学研究 85巻2号 pp148-156)
[3] マネジメントとは何か(スティーブン・P・ロビンス)