稼げる営業マンの考え方と日々のアクション

「どうすれば稼げる営業になれるのか?」
これは営業マンであれば、多かれ少なかれ関心を持つテーマです。

もちろん稼ぐことによる給料アップという直接的なリターンもありますが、他の職種とちがってセールス部門に特徴的なことは「稼げている状態であれば、仕事に関わるさまざまなことがうまく行っている」状態であるということです。

プロスポーツ選手が得点や成績にこだわるように、多くのセールスパーソンが稼げている状態を継続することやコンディション作りに関心が高いのも当然といえます。

「自分を売る」トップセールスに直接学ぶ

人並み外れた業績を上げるトップセールスマンの主張には共通性があります。
彼らの特徴的な考え方を結論的にまとめると、「商品ではなく自分を売り込め。そのために自分が人間的に優れた人物であり、徹底して準備することが絶対に欠かせない。努力を惜しむな」といったところになります。

かたちを変えてさまざまな人が語っていることなので、どこかで目にしたことがあるかもしれません。

“言うはやすく行うは難し”という空気を察して、敬遠している人が多いのではないでしょうか。
しかし、”稼ぐ”という目標について言えば、彼らの実感している正攻法に直接トライすることがけっきょくは近道なのです。

ゼロサムゲームの研究では、プレーヤーの力量により「勝者のゲーム」と「敗者のゲーム」という2種類のゲーム展開があることが知られています。

セールス活動も限られた市場を獲り合うゼロサムゲームの要素が強く、分類としては勝者のゲームと敗者のゲームに分けられます。

二つのゲームは基本的性格において正反対なのである。プロのテニスは勝者の勝つべく起こした行動により結果が決まる「勝者のゲーム」であるのに対し、アマチュアのテニスは敗者がミスを重ねることによって決まる「敗者のゲーム」なのである。

(チャールズ=エリス『敗者のゲーム』)

“勝者”のトップセールスが自分のペースの商談で受注するとしたら、世の大半のセールス活動は他社よりたまたま先着したり、相対的にアラの少ない提案で競り勝つ、ということが起こっている可能性があります。

つまり、身の回りの”ちょっと良い”ノウハウには本質的に稼ぐ方法論があるわけではなく、トップセールスの考え方と行動を1%でも吸収した方が財産になるのです。

また、業績に優れたセールスパーソンは必ず圧倒的な行動量を伴っているため、活動事例のサンプルそのものが多く、この1点をとっても信ぴょう性が高いと言えます。

『営業の神様』は何が違うのか?

自動車販売のセールス記録でギネスブックに載った人物がいることをご存知でしょうか?

その文字通り世界のトップ営業マンはジョー=ジラードという人ですが、その営業に対する考え方と日常の行動を解説した『営業の神様』という本が出版されています。

「私の新車販売台数は、アメリカの全自動車販売店(何人もの営業マンを抱えている)の九四パーセントの販売台数を常時上回っていた--たったひとりで。」と振り返っています。

この本、原題はもっと素朴に”Joe Girard’s 13 Essential Rules of Selling”となっていて、彼の圧倒的なセールス活動から導き出された13の基本ルールが語られています。

聞き書きということもあり、非常にシンプルで読みやすく迫力があります。
たまたま当たった人物ではなく、まさにギネス級の活動から生まれたノウハウなので一読をおすすめしますが、ここでは2点紹介します。

1点は、ルール4「働くときはとにかく働く」です。

とにかく働く、と言っても長時間労働ではありません。ジョー=ジラードの独特な着眼点は、活動の密度への圧倒的なこだわりです。

息抜きもしないし、営業チーム同僚とも話さないというのだから徹底しています。一方で、セールス活動のチームワークも重視していて、サービスサポートのチームをディナーに招待したり、自腹で営業事務スタッフを雇ったりして、顧客サービスにかける密度を追求しています。

また、全編を通して浮かび上がってくる考え方として、自分と顧客/見込み客、そして自分自身以外は無関係である、場合によっては邪魔である、という思想が読み取れます。

会社や同僚、給料などの環境はトップセールスにとっては論点ではないのです。
また、働くことの密度の前提として事前の計画へのこだわりもルールとして取り上げていますが、これも自分との戦いの一面と言えます。

買われる営業マンを直接の目標にする

また、ルール7「聞き役に徹する」も象徴的です。「何も言うな。まずは聞くのだ。」と言い切ります。

多くの人がはまる最大の罠は、相手が話しているあいだは、次に自分がしゃべることを準備する時間だと思ってしまうことだ。次に何を言おうかで頭がいっぱいで、今まさに投げかけられているメッセージをそっくり聞き逃してしまうのだ。

ジョー=ジラードは聞くことの徹底以外にも見かけや服装に関するルールも提示していますが、これらは自分を買ってもらうためのプロセスとして組み上げたものです。日本の現場では”ハイタッチ”として暗黙知的に語られることの多いコミュニケーション・スキルを徹底的に分解して解説しています。

顧客は商品ではなく営業マンを買う、という言葉は何となく触れることが多いかと思いますが、紋切り型になってしまい、往々にして実感をともなって理解できていない言葉でもあります。

平均以上の業績を上げているセールスマンであれば、営業は無数のプロセスの確率論によって成り立っていることを大前提にしています。
受注の瞬間だけを「当たり」と見るのであれば、セールス活動の多くはむしろ「外れ」のプロセスの方が多いものです。

このような一連の活動で業績に差がつくのは、平凡なセールスマンは商談をクジ引きのように短期的な機会ととらえてしまい、うまく行かない顧客との商談を打ち切り、「外れ」を確定してしまうことです。稼げない構造を自ら作り出しているのは「敗者のゲーム」です。

セールスは対人スキルであるため、無理なく商品を買ってもらう前提として、無理なく自分を受け入れてもらうことを直接の目標とすることは極めて自然なことなのです。

意識的に見込み客のマインドシェアを上げていくことで、プラスの人間関係を作れることは、稼ぐこと以外に心理的リターンとしてプラスの報酬を与えるものと考えられます。

顧客との良好で積極的な関係を作りたいからこそ、「働くときにはとにかく働く」「計画を立てる」といった徹底した準備にも圧倒的に意欲的になれます。

このような活動プロセスの根本的な違いが、稼げる営業の「勝者のゲーム」を支えているのです。

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