【業界・業種別】営業の仕事と成長のポイント

営業部・営業職はほとんどの企業にあるため、その具体的な仕事は企業によってさまざまです。

営業マンがキャリアパスを描くには、業種ごとの違いやより具体的な職種ジャンルについて知ることが有効です。

営業職は顧客との対人関係のウエイトが大きい職種であるため、各営業マンのキャラクター・人物特性によって、その人に向いている分野・向いていない分野が比較的はっきりと分かれます。

適性ジャンルは大分類で3種類に分類できます。

活動型 : メッセージ発信力やアクティブさ、ノリの良さが営業成績に直結するジャンルです

傾聴型: 活動型とは逆に顧客の微妙な意図に対する共感性や聞き入る力が業績に結びつくジャンルです

頭脳型: 複雑な段取りや高度な顧客要望に素早く的確に回答する頭の切れ味やロジカルさが命のジャンルです

このように、得意ジャンルはベースの個性と連動しています。

また、商品や商材にもそれぞれ固有の売れる営業マン適性があるため、自分の得意ジャンルをフィールドとして選ぶことが稼げる営業マンになるうえで非常に重要なのです。

業界によっては商品知識や商慣行などの業種専門スキルが重視されることもありますが、そのような業界はおおむね「頭脳型」に偏っています。

“売れる商材”にとことん強い「活動型」営業

「活動型」は、多くの人がセールスマンとして思い浮かべるような王道の営業スタイルで業績を上げるジャンルです。

売れる理由が明確な商品分野では、とにかく顧客へのメッセージ発信力の強さが営業成績をもっとも左右します。

メッセージ発信力には、「ぜひ買ってください」と爽やかに言い切れる発言力のほか、顧客にかわいがられる愛嬌や少々の図太さ、客先を飛び回れるバイタリティ、考える前に電話をかけているような人懐っこさなどが含まれます。

また、このジャンルの法人向け商品では、受注までに社内事務や顧客内の稟議など購入決定が滞る事象がつきものであるため、あきらめず繰り返し客先に足を運ぶしぶとさも勝因になります。「ご検討状況をおうかがいしたいと思い、ご連絡差し上げました」という電話一本が受注率を大きく変えるのもこのジャンルです。

売れている商品、定番商品、成長しているメーカーなど、明確に売れている理由がある企業に身をおくことで業績を大きく伸ばせる機会があります。

典型的な業種としては、法人向けでは、電話回線やコピー複合機などのOA機器、人材派遣・転職メディア、不動産仲介、メディア広告枠販売(Web、紙含む)などが挙げられます。個人向け商材ではその時々のヒット商品分野にくわえて、インターネット回線や、教育・英会話・各種スクール、フィットネスなどの定番分野があります。また、医薬品業界のMRなども、多忙な医師との接触量に連動して業績を上げられる分野です。プロダクトアウト型のメーカー(製造業)の営業もこのタイプに当てはまります。

また、営業部門内の仕事の役割としては、新規開拓営業に強みを発揮します。新しい商品の立ち上げでは、商品力を測るために活動量の多さが不可欠になることにくわえて、自社の売り込む力にネックがない状態で市場テストをすることが重要なのです。

信頼が”継続取引”を呼び込む「傾聴型」営業

「傾聴型」は「活動型」とは逆に、顧客の話を聞く営業スタイルで信頼感のある継続的な取引関係を築き上げるジャンルです。

商品分野としては、金融商品やサービスなど、購入の決め手となる理由が曖昧、または買い手によってバラバラなものが向いています。

たとえば傾聴型の代表的なカテゴリーとして生命保険があります。

保険は、守りたいリスクイベントや貯蓄性など、買い手が重視するポイントによって商品の良し悪しが変わります。また、未来のイベントに対する保障を買うものでもあり、顧客は「そのイベントは起こらないかもしれない」とも思っているため、買わなければならない理由が非常に曖昧です。

このように、受注時点で顧客が商品を理解しきれないような分野(”情報の非対称性”といいます)では、買い手にはつねに不安がつきまとうため、売り込むことよりも信頼感を確立することの方が”売れる理由”として重要なのです。

傾聴型の商品に特徴的な顧客コメントは次のようなものです。「自分ひとりでは何を買うべきか正直分からなかった。なんでも質問に答えてくれて、営業担当者の人柄が一番信用できるこの会社に決めました。」

傾聴型の”聞く力”には、表面的なヒアリングスキルだけでなく、他者のエピソードやドラマに感情移入してしまう共感性や、素朴で誠実な人柄、困っている人を見るとつい助けてしまうホスピタリティ・献身性などが含まれます。

人間関係における信頼感は、言葉にあらわれない部分も幅広く含まれた総合判断で決まるため、付け焼き刃でごまかしが利かないのです。

このような信頼が求められる代表的業界としては、自動車販売や銀行業全般のほか、個人資産家向けの分野、とくに金融証券・保険、不動産運用・物件仕入などがあります。またライフイベントに関わる分野で結婚コーディネーターにも傾聴力が求められます。

職種適性としては、BtoCでは拠点店舗の窓口販売、BtoBの法人営業では、得意先へのルート営業、間接販売モデルのパートナー営業・代理店窓口などを得意とします。下請けポジションのメーカー(製造業)の営業でも傾聴型が求められる場合があります。また、商社に分類されたりしますがいわゆる問屋(卸売業)も、お客様のニーズを聞き出し、マッチする商品・サービスを探して繋ぐ役割になるため、信頼関係作りのための傾聴スタイルが必要になります。

“ビッグディール”を切り回す「頭脳型」営業

「頭脳型」の分野は、表面的な対人コミュニケーション力と異なり、より抽象的なアレンジメント(高いレベルの段取り)の良し悪しで営業成績が決まります。

この分野はB2Bの”無形商材”としてイメージされているものが多く、単品ではなく複数の商品を組み合わせて機能する複合商品や、複数の専門サービス業者の連携によって進めなくてはならないプロジェクト型のビッグディール(大型商談)が主なフィールドといえます。

法人大型案件で頭脳型の切れ味が求められるのは、ひとつにはプロジェクトの完遂に不確定要素が多く、状況に応じて納品までの段取りを手際よく進めなくてはならないからです。想定外のイベントが起きた際に、それが一部の事象であっても全体が機能しなくなるような結果を迎えるリスクがあるのです。

また、複合商品・サービスは、他の関連商品との組み合わせによって実現できることの幅が広いため、「自社商品で潜在的に何ができるのか?」またその現実味とリスク・コストを理解したうえでタイムリーに顧客要望に応えることが受注獲得力に直結します。

このようなプロジェクトマネジメント能力や、ある種のコンサルティングスキルが「提案力」と呼ばれているものの具体的な内容です。

頭脳型の提案力は、多くの要素を組み合わせて考えられる緻密なロジカルさが前提となり、また、あらかじめリスクを見通せる批判的洞察力、考え抜く体力や責任感、有事の瞬発力を生み出すリーダーシップが含まれます。

頭脳型の業界は、総合商社・専門商社のほか、IT業界全般(ハード・ソフト・ネットワーク製品ベンダー、SIerなど。Web業界をのぞく)、建設・プラント、ハイテク機器・FAメーカーなどが挙げられます。

また、職種分類では、自社のチャネル設計・計画にたずさわる営業企画や、トップセールス対象となるような大口顧客のアカウントマネージャー、自社ラインをたばねる営業マネージャーに向いています。

まとめ:自分のキャラクターに沿ったフィールド選択が飛躍の第一歩

このように営業職のフィールドには、活動型・傾聴型・頭脳型の3大カテゴリーがあります。

それぞれに売れる理由として必要となる人物特性が根本的に異なるため、「自分のキャラクターに沿ったフィールドでなければ活躍が難しい」ことが理解できたのではないでしょうか?

この分類は大カテゴリーで、じっさいには各営業マンの個性の組み合わせによってより詳細な適性を探していくことが有効です。

たとえばよくあるパターンの例として、20代女性が見た目の華やかさで「活動型」業界で新卒就職したものの、ベースのキャラクターとしては他のジャンル資質が優勢なケースがあります。このような場合、職場にはある意味ライバルが続々と供給されてくるため、早い段階で適切なカテゴリーに移った方が良いのです。

営業について、幅広く知りたい方は 「【完全版】営業とは何か―営業の本質と真髄、その全てを学ぶ」 をご参照ください。