PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Action)は、ビジネス活動の方法として広く知られるようになりました。
一方で「PDCAを回せない、回らない」というマネージャーの悩みも増えています。
PDCAとは何なのか?
PDCAは、別名デミング・サークルとも呼ばれています。
デミング博士は、品質の研究で知られ、本国の米国よりも日本のメーカーに熱狂的に支持された人物です。
“Made in Japan"というキャッチフレーズも過去のものになりつつありますが、日本のメーカーは世界に類を見ないほど高品質にこだわっていました。
「カイゼン文化」として知られる品質管理の理論的な基礎は、デミング博士の影響を大きく受けています。
カイゼンを担っていたのは、工場のラインにおける小集団活動(QCサークル: Quality Control Circle)です。
つまり、工場で製造活動と製品の出来を追跡し、不良を低減するプロセスがPDCAでした。
また、カイゼン文化には「QC七つ道具」と呼ばれる分析手法があり、Planなどの段階できわめて具体的な分析を実施します。 分析のフレームワークが揃っているため、QCサークルでは「PDCAが回らない」などということは起きないのです。
メーカーは世界をリードする日本の基幹産業の1つでしたから他業界も見習おうとしたのですが、伝言ゲームのようにPDCAだけを切り離して取り入れようとしたことで、現在の混乱を招いていると言えます。
PDCAを回すには?
PDCAが回らないのは、ベストプラクティスの消化不良によるものです。PDCAの4文字の中だけで解決を探ろうとしても答えが出るはずがありません。
QCについては活動事例も含めて書籍がたくさん刊行されており、他業界が学ぶための門戸は開かれています。
本当にPDCAを定着させたいのであれば、まずQCについて理解すべきでしょう。
その結果、難しくて導入できないという結論はあり得ます。ただ、「製造業は現場の努力でそこまで徹底して考えていたのだ」と知ることは大切です。
また、PDCAが古いという見方も間違っています。
PDCAは主に品質管理のための手法であり、メーカーもトップマネジメントをPDCAしているなどということはありません。
用途の制約なく「時代がPDCAから別のフレームワークに移った」と解説するものがあるなら、それは理解していないものを否定して新しいキーワードを提示しているだけであり、詭弁です。
PDCAは工場に限定されるフレームワークではありませんが、すべての活動にフィットするわけではありません。分野の適合性もQCを知ることで理解できるでしょう。
PDCAが回らないのはマネージャーが弱体化しているから、とも言える
方法論は上述のとおりですが、このような浅い理解が横行してしまっている背景に、ミドルマネージャーの質の低下が進んでいるという隠れた問題はあり得ます。
Plan段階の分析の緻密さがなければPDCAは回らないわけですが、そもそもマネージャーに分析能力がない場合には着手することすらできません。
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