マネージャーの悩みの共通パターンの1つに、指示待ちがあります。
オンライン業務の拡大による在宅勤務やテレワークの普及に伴って、チームワークへの懸念は高まっています。
「指示待ち」現象の難しい点は、原因のパターンがたくさんあることです。
マネージャーの希望は「自分の頭で考え、自発的に行動して欲しい」ということに尽きます。しかし、自分の頭で考えられる度合いとできない理由は人それぞれに異なります。
「指示待ち」という1つの現象に見えている機能不全は、実はバリエーションがあります。パターン別に原因と解決策を確認しましょう。
「仕事をしたくない」型の指示待ち
まず、分かりやすく低次元なケースとして「どうしても働きたくない」型の指示待ちがあります。
これは実際には指示待ちではなく、指示されることすら嫌だというのが実情です。
このパターンであるかどうかは、全体的な態度の悪さで区別できます。
指示した時の反発感や、日頃のごまかし感、時間のルーズさの度合いをよく観察しましょう。
働きたくない人は、指示されることによりギリギリ働いているので、指示待ちからの脱却を期待するのは諦めましょう。
残念なことですが、アメとムチで動かしていくのがマネージャーの役割となります。
勤務態度不良は性格の問題であり、外からの働きかけによる改善は見込みづらいため、異動の機会で人員入れ替えすることが根本的な対策です。
「失敗を恐れて動けない」型の指示待ち
先ほどのケースと対極的に勤務態度は良く、指示されたことはきっちりこなすがそれ以外のことは絶対にしないタイプとして、失敗を極度に恐れているケースがあります。
自分の判断で行動しようと思っても、あとから「勝手なことをするな」と叱られる展開を想像すると動けなくなります。
このような人の場合、指示待ちで責められるケースも同時に恐れているため、「勝手なことをして自分のせいになると困るから」という予防線を日頃から口にする傾向があります。
この場合にはマネージャーは、現状の指示待ちの状況、または自発的な行動による失敗のいずれかを受け入れる必要があります。
各自の自律行動により指示待ちは改善しますが、指示していない行動は結果的に失敗の可能性が高まります。
その際のコミュニケーションとして「ナイストライ」と言えるのであれば、アクションをとる方向にインセンティブを与えられます。
このようなマネージャーの役割を、心理的安全性の構築と呼びます。心理的安全性は、ストレス耐性の低いメンバーに対しては効果的な手段となります。
その他の指示待ちは、目的意識の形成に難がある
上の2つのパターン以外の指示待ちは、仕事の目的意識が低く動き方が分からないケースです。
目的意識の持ちやすさは、人により異なります。
これは誤解されている点であり、研修が効果をあげない理由でもあります。
一般的には、目的意識が明確であれば仕事をうまく進められると信じられていますが、じっさいには因果関係は逆です。
仕事をうまく進められるような構造理解ができた時に、目的意識が感知されます。
そのため、目的意識だけを切り離して高めることはできないのです。
新入社員や若手など、仕事の経験が浅いケースでは全体像の理解度を上げることが1つの対策になります。
ただし仕事をどの程度構造的に理解できるかは、最終的には能力の問題です。
人海戦術をとっていけば一部の人しか理解できていない構造に必ずなります。
よって、仕事を理解しているマネージャーが指示し、メンバーは指示の通りに行動する、という関係が自然です。
ただし、目的意識を持ちづらいメンバーであっても、異変に気づくことだけはできます。そのため、日頃から職場の観察状況を報告してもらう、という対策は一手です。
指示をするのはマネージャーという状況には変わりないものの、状況の進行に早めに気づくことで、先手を打つ余地が広がります。
仕事の複雑さと従業員のレベルを合わせて脱却
このように指示待ちの原因は様々であり、ケース別の対策が必要です。
そして、仕事の複雑さや抽象度の高さに応じて、仕事のメカニズムを理解し目的意識を形成できる人は少なくなります。
チームの自律性を高めたいのであれば、採用段階と人員配置の工夫で人材のレベルをコントロールするしかありません。
指示待ちのタイプは個性によるものであり、 ビッグファイブ に基く性格分析により計測・推定できます。
チームワークの改善は努力だけで達成できる範囲は限られるため、ビッグファイブの組織分析ツール Decider®で自社分析や採用段階のチェックを実施することがおすすめです。
近年のトレンドであるリモートワークは状況理解の制約になりやすいため、うまく動けない従業員は増えるでしょう。
指示待ちは、能力ギャップによる無力化の兆候であるため、見逃すことなく積極的に対処しましょう。