採用戦略立案のポイント

企業が人の寿命よりも長く存続するのは、継続的に採用しているからです。

個々のビジネスマンがリタイヤしても、採用ある限り企業もまた在り、採用した人こそ企業そのものという一面があります。

企業の持続的な発展のため、仲間の獲得で優位に立つプランを”採用戦略”とよびます。

採用戦略はダイレクトマーケ+マスマーケの2階建てで考える

顧客を集めるマーケティングをPR、投資を集めるマーケティングをIRと呼びます。

採用もまた、従業員を集めるマーケティングです。

PR・IRと同様、”知られるための努力”には多彩な手法があります。

“採用戦略を立案する”ということは「採用マーケ手法の選択肢をどう組み合わせるか?」という問題を各企業に適したかたちで解くことです。

採用戦略の独特なポイントは、原則、ダイレクトマーケティングを基礎とする、ということです。

言い換えれば、お店でお菓子を買う時に買い手がどこの誰なのかは知る必要がないのに対して、社員を集めるときには、それがどのような人であるかが非常に重要なのです。

採用にもマスマーケ特有の効能はありますが、これから採用戦略を立案する企業にとっては、ダイレクトマーケという1階基礎を適切に構築することが先決と言えます。

ダイレクトマーケの基本は相手の深い理解

ダイレクトマーケティングにもとづく採用プロセスは、大きく3段階から構成されます。

採用過程が進む(=内定に近く)につれて、よりセグメントが絞られるように組み立てます。

  1. セグメント分けできる接触ツール(スカウト・人材エージェント)
  • パーソナリティテストを活用した再ターゲティング
  • 採用面接・フォローアップを通じた相互理解

採用活動では、自社に適した人材であることを見極めるだけでなく、入社志望度を完全に固めるために口説く・理解を得る、ことが欠かせません。

とくに新卒採用は入社までの期間が長く、学生を長期間ひきつけておくことが採用競合に勝つためのポイントになります。

面接やリクルーター活動を通じた相互理解のプロセス(見極める・理解を得る)は、1対1の対話が基本形となるためマンパワーの投下物量が求められ、もっともコストがかかります。

採用戦略を設計する際の起点は、採用チームの頭数・時間資源をまず確認し、前段階で適切にセグメント分けすることです。

パーソナリティテストを活用した再ターゲティング

前述のとおり、採用戦略の1つの定石として採用活動の密度を上げる、そのために各ステップでターゲティングに工夫を施す、という考え方が汎用性が高く有効です。

見落とされがちな手法として特筆なのは「パーソナリティテストを活用した再ターゲティング」です。

スカウト媒体や人材エージェントなどのセグメントアプローチできる手法が普及し、自社に適したデモグラフィック属性を持つ候補者にリーチすることは一般的になっています。

一方で、一次接触後の母集団をさらにターゲティングする手法はまだまだ知られていません。

スカウト直後の初期段階では接触した人の情報は実はほとんど分かっていないと言えます。

よりセグメントの精度を上げるためには、パーソナリティテストを通じて応募者の性質の理解を深めることが重要です。

パーソナリティテスト(性格検査)は、応募者のサイコグラフィック(心理)特性を分析するツールで、当社も転職エージェントの知見を結集した「 Decider 」(ディサイダー)を開発・提供しています。

Deciderは、心理学のBig5(主要5因子)に沿ったテスト設計により、簡潔なアンケート回答から優れた特徴抽出性能を引き出しています。

導入作業不要のクラウド型ツールで、採用応募者のスマートフォンで手軽に受検可能です。

性格や人柄といったサイコグラフィック特性を客観指標で可視化することで、自社のねらいとする層に採用チームを集中させ、よりパーソナライズされたコミュニケーションの提供が可能となります。

まとめ

採用戦略の要諦は、最大の希少資源である採用チームの人的資源効率が勝敗を分けるという制約条件を踏み外さないことです。

そのためには選考前の母集団をいかに制御するかがポイントとなります。

ダイレクトマーケティングのセグメント手法が採用戦略にとっても立案の着眼点となるのです。

ダイレクトマーケティングの練度向上には、デモグラフィック属性、サイコグラフィック属性の理解が必要です。

とくに心理面ではBig5による直交性の高い分析手法が進展したことで、パーソナリティテスト Decider のような新たな組織・採用分析の機会が生まれ注目されます。

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