企業の人的資源を増やす、強化するテーマの2大分野が採用と人材育成です。
採用と育成は別の分野として取り扱われることが多いのですが、今回のテーマは「人材育成もまた採用の制約を強く受ける」という点です。
適切なツールを活用して、採用努力を投下することで人材育成の成功確率が高まります。
人材育成の基本はOJT
企業の一線で活躍する人材のノウハウを”暗黙知”と呼び、その伝達プロセスを分析したのが『知識創造企業』(野中郁次郎, 1996)です。
人材育成は、各企業のラインの仕事を次世代の人材に伝えることが基本シナリオとなります。
次世代の人は、受け継いだ暗黙知を活用し、時代に応じた解釈で新たな商品・サービスを生み出して発展させます。
世代間の知識の伝達には、書類や文章などの”形式知”を経由して伝わるものもありますが、語り得ぬものとして”暗黙知→暗黙知”のルートで伝わる知識もあります。
形式知を経由して伝わるものは属人化を避けられますが、それはしょせん”目黒のサンマ”であって、差別化のないマニュアルオペレーションにしかなりません。
ゴーイングコンサーンとして企業が10年後にも再生産できるためには、徒弟制的なOJTが第一の人材育成の場となります。
人材よりも希少な資源は”仕事の場”かもしれない
企業の主役を育成するには、実戦の部署が不可欠です。
人材の頭数を増やすことはできても、その教室にあたるライン部署を増やす余地はほとんどありません。
会社の部署機能は増やすことができず、その数は多くの企業で10を下回ります。
一般に「昇進パス」「出世コース」として知られる花形ルートは、育成の観点からも考えられたうえで人員配置が設計されるものです。
けっきょくのところ、人材育成は組織づくりそのもの(職制)と一致するため、「要職とその補佐に誰を配置するか?」という問題に行き着きます。
「早期選抜のメリット・デメリット」 で解説したとおり、育成に足る人材を的確に選抜することが人材育成のポイントであり、その逸材ポートフォリオの良し悪しは採用の段階で決まってくるのです。
“採用”で属人的なビジネスを再生産する話
人材を厳選せざるを得ない業界として、戦略コンサルティング業界があります。
戦略コンサルのトップファームでは、書類通過後の最終的な合格率が5%程度と言われています。
ここでは、難関であるということよりも、1人を選ぶために20倍の候補に会っている労力に着目します。
コンサルファームの採用手法は、現役コンサルタントによるケース面接ですから、言い訳なしに生産資源を潤沢に投下して厳選しているということです。
言うまでもなくコンサルティングも属人性の高いサービス(限られた人材しか遂行できない)ですが、「属人性が強いから再現できない」とあきらめているわけではない点に学ぶべきポイントがあります。
適格な人選は確率論的に難しいものの、大量のくじをひくことで再現性を持てる、ということが重要です。
客観的な選別眼も必要
「採用努力や人選によって人材育成を加速する」というポイントは、多かれ少なかれどの業界にも必要な視点です。
上述のとおり、人材獲得に資源を割く、ことが1つの変数になります。
一方、選別眼を向上することも重要です。
成長余力は各個人のパーソナリティで決定されているため、採用・選抜にあたり客観的なパーソナリティ・テストを導入することも有効です。
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漠然とした問題意識の段階から導入支援可能ですので、ぜひご活用ください。