採用面接のねらいと要領
採用面接では、スキルとパーソナリティの両面から人物評価を行うための判断材料を収集します。
一般的な企業の面接の流れでは、応募者側が十分な情報を持ち合わせていないため、有効な自己表現をし切れていない→判断材料不足に陥るケースが多くあります。
本記事では、当社が採用コンサルティングの際に推奨している面接官の要領を紹介します。
また、応募者側の受け答えのポイントも合わせて解説します。
導入・あいさつ
入室直後の導入パートのポイントは、面接官が第一印象に注目しすぎないよう気をつけることです。
「開始1分で人物を判断してしまう」ケースは面接の評価ミスの典型例として知られています。
逆に、応募者側としてはファーストインプレッションで判断されがちであることは認識しておくべきでしょう。
自然体であることがもっとも無難であるため、本来的には普段から挨拶をうまくできる人であることが一番です。
ただし、しゃべることに苦手意識がある人は、最低限、入室時から会話する意識モードに入っていた方が良いため、面接30分前など直前時間帯に親しい人と電話で雑談しておくとウォームアップになります。
アイスブレイク
アイスブレイクはハイクラスの採用面接などでは必ずしも必須ではありませんが、新卒・若手層ではアイスブレイクから入った方が話を引き出しやすく、帰属度も高まりやすい効果はあります。
話題として、自社の日常生活のトピックを取り上げて話すのは効果的です。
応募者から見て自社の情報は関心の対象でもあり隠れた情報も多いため、単なる世間のニュースや面接官のプライベートの自己開示よりも共通の話題として適切です。
また、会社の話題でアイスブレイクする流れをとる場合、逆質問を冒頭で求めることも有効です。
採用面接は応募者のプレゼンであるため、逆質問は導入時でも最終パートでも違いはありません。
面接官からの応答が入ることで対話の一方通行感が減る効果があります。
職歴の説明
中途採用の場合、職務履歴の説明パートのやり取りを通じてスキルチェックを完結します。
まずは、応募者に「現職に至るまで手がけられていた仕事について一通りご説明をお願いします」という流れで説明を求める一般的な形式で問題ありません。
応募者側は履歴書の経緯と一致する形で2〜3分程度、仕事を要約して説明します。
その際、結論として今の自分の客観的な水準をどの程度と自己認識しているかをまとめて語ると後続の対話がスムーズです。
一例としては、**「○○業界の営業担当レベルとしてはひと通りの経験を積み、同業界であればすぐにフロントを担当できるようになっています」**のようなまとめ方が好例です。
ただし、履歴書棒読みのような職歴説明になりがちなため、現実的には面接官から「今あなたが同業界の同じ職種に転職したら通用するレベルと言えますか?」といった誘導が必要になります。
その際の受け答えによって、職務理解度を含めてどの程度いまの仕事に主体的に関われているかを推定できます。
募集ポジションの紹介
面接官からの募集ポジション・部署の紹介は、現実的には実施できている企業は多くありませんが推奨です。
目標設定面談で新たな仕事を依頼するつもりになって、面接官から仕事の背景とサマリーを3分程度で説明し、反応をヒアリングします。
面接官が「今の話を聞いて、現職と近い点、難しそうな点などはありますか?」と誘導することで、仕事内容と関連づけてどの程度自分を説明できるかを判断します。
ただし、現実的には一方通行のヒアリング形式が多いため、仕事の説明なく「あなたが当社に入社したらどのように活躍できますか?」といった質問を受けるケースが多くあります。
この流れになった場合、応募者は募集職種に対して何ができそうかを一度回答したうえで、「募集されているポジションについて求人票からは読み取れていない部分があると思っております。活躍できる条件はどのようなものがありますか?」と聞くことで似たような受け答えをしやすくなります。
転職理由・志望動機
転職理由・志望動機については「逃げの転職になっていないか?」を確認する位置づけ以上に重視しすぎないことがポイントです。
動機形成が強い人は優秀そうに見える傾向がありますが、見えるというだけでとくに保証はないのです。
それよりも既述のとおり具体的な仕事を題材とした話の具体性の方が重要です。
ただし、一般的な採用面接では転職理由や志望動機の純粋さを好む面接官は多いため、応募者としては、飾らず的確な受け答えができることは重要です。
動機を説明する際に、近未来への期待や成長にかける意欲が含まれているかを事前にチェックした方が無難です。
また、単にその企業のファンであるというような”とってつけた理由”に見えるものも避けます。内発的な動機と無関係なものほど、こじつけ感は強まるので注意が必要です。
逆質問
逆質問についても、原則として選考の主材料にはなりづらいことを意識しておくことが重要です。
人によっては、親の介護などやむを得ぬ就業上の制約条件などがあるため、そうした話し合いの機会を提供する役割の方が重要です。
応募者の側では、求人に関して見えていない情報が多々あるため、先ほど紹介した「活躍人材の条件」など具体的な仕事に関する情報を求めることは有効です。
その際、情報を入手して終わりにするのではなく、その仕事にどう関われそうか、断片情報でも良いので自らの考えを述べることが重要です。
まとめ
このように、面接官が判断材料を引き出すためには、呼び水として具体的な仕事の情報を提供するなど、いくつかのポイントがあります。
面接という手法そのものの限界により、一般的な採用面接が仕事のパフォーマンスを見抜く確率は最大50%程度と言われています。
応募者の側では、一般的な面接のバイアスがどのような点にあるのかを理解することで、断片的な印象で落とされる懸念を減らせます。
どのような展開になった場合でも、”とってつけたような話や態度”は透けて見えるためマイナスです。選考通過したいがための言動は避けるようにしましょう。