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ストレス耐性・うつ傾向を見抜くポイント

面接チェックと適性検査でメンタル不調のトラブルを未然に防ぐ
職場うつなどのメンタル不調は、多くのマネージャーにとって悩みの種です。
「最初はごく普通だったのに、ふとしたミスをきっかけに崩れていった…」
「同じ仕事でも、ストレスを強く受ける部下もいれば元気にやっているメンバーもいる」
このように、メンタル不調は周囲の目から見ると不可解に見える面があり、取り扱いづらいものです。
不調が長期化すると海馬など脳の部位が萎縮することが知られており、事後的な対処としては、集中力低下・遅刻など異変に気づきしだい早めに産業医など医療機関にかかるよう指導・アドバイスすることです。新型うつ・双極型(躁うつ)・統合失調症など類似のバリエーションがありますが、要するに不調であれば診断を受けた方が安心です。
そして、より根本的な対処は採用時の選考見極めです。個人ごとにストレス耐性に違いがあることを理解し、担当する仕事のストレス強度に見合った人を採用しましょう。
就活・転職する人から見れば、入社したい一心もあります。面接官も理解していますが、自分のキャパシティを超える仕事に就いたとしても休職・転職が無為に増えたり、結果を残せない職歴がついてしまうのでは、かえってマイナスなのです。

ストレス耐性が低い人の特徴は?

「ストレス耐性」の低さから来る問題は、うつ以外にもいくつかのパターンがあります。ストレス耐性が低い人の特徴を具体例で確認してみましょう(別掲リスト)。
このような挙動は内心の不安から来ているもので、なりゆきしだいで職場うつに移行する予備群といえます。
また、うつ病を発症しなかったとしても、手間がかかる一方で成果が上がりにくい存在となるため、入社年次が進むにつれて同期について行けない、というケースも多々あります。
  • 他責にしていることが多い。見るからに精神の安定が欠けている
  • ほとんど起きないことを気にかけていて仕事が遅い。ミスも多い
  • 「まだやっていません」「ちょうど今から始めるところでした」という返事が多い
  • 「やります」「頑張ります」とは言うものの、立ち消えになる。
  • 対等な関係で話すことができず、妙に卑屈になったり横柄になったりする。パワハラを起こす

ストレス耐性=耐える力ではなくストレスを感じる度合い

ストレスに強いとは、じつは心理的ダメージに耐える力が強いということとは異なります。この点は、"耐性"という用語のイメージから誤解しがちなポイントです。
そもそもストレスを感じる物ごとが少ない、したがって心理的ダメージそのものを受けづらくリラックス度が高い状態こそ本来のストレス耐性の強さです。
ストレスを引き起こす要因を「ストレッサー」と呼びますが、花粉症やアレルギーと同じように、ストレッサーに対して実際にストレスを感じるかどうかは個々人の性格特性によって違っています。

ラザルスの発見

ストレス適応挙動「コーピング」で知られるR・S・ラザルスは、多変量解析によりストレスの初期的なシステム解明に功績を残しました。
ラザルスは、人生事件が健康に与える影響について「その相関係数は〇.二〜〇.三という非常に低い値」 [1]と述べ、外的イベントそのものは一様にストレスとは言えないことを前提としています。
また、病気の推移と日常精神混乱の相関調査の結果を「ある被験者たちでは、相関がプラス〇.八五という非常に高い値となり、また他の被験者たちではマイナス〇.五となりました」と報告し、「人格特性や社会的関係特性は、ストレスと健康の間の関係の各人の個人的パターンを決定します」と結論づけています。
一般的な人には信じられないことかもしれませんが、自己評価の高い人の中には病気になるとムードが上がる人が存在するのです。

ゴールドバーグによる神経症傾向の抽出

ラザルスは性格とストレスの関係、つまりストレス耐性の存在を予言していましたが、その後、まったく別研究の流れの中で、ゴールドバーグにより心理学の「ビッグ・ファイブ」が解明され、性格特性は5つの基本因子から成り立っていることが分かりました。そのうちストレスを感じやすい度合いは、"神経症傾向"として特定されています。他の人よりも多くの物ごとに対して危険・不安を感じる度合いが相対的に強いからメンタルが弱いということなのです。

ストレス耐性を意識した職場づくりが急務

現代ストレスの一大テーマとして、仕事・会社があります。近年、ストレスチェックが義務化されましたが検出することはきっかけに過ぎず、本来の問題はストレス耐性の不適応にあります。
既述のとおり、ストレスとは主に各個人の問題であり、メカニズム上、環境は二次的な問題に過ぎません。社会のバリューチェーンの仕組み上、それぞれの仕事には達成しなくてはならない水準があり、それを満たせないサービスは淘汰されます。
結論として、それぞれの仕事に必要な水準のストレス耐性をもった人を配置する以外に手はありません。そしてそれはビッグファイブを計測可能になったことで実現しています。「誰にでも働きやすい職場」を作ろうとして職場ごとなくなってしまうのでは本末転倒です。
神経症傾向はもともと進化のなかで、防衛本能として働いてきた脳の機能と見られています。交感神経がアドレナリン分泌を刺激し、体を緊張・闘争モードに切り替えるため、体力を消耗します。
野生の動物を狩猟していた原始時代では非常に重要な役割をはたしてきましたが、現代のビジネス環境には不適性として作用するケースが多くあります。性格特性と遺伝の関係は現在も研究が進められている分野ですが、一般的に約50%は遺伝要因と見られており、うつ病と関連してストレス耐性も遺伝的影響が注目されています。

採用面接&適性検査でWチェック

ストレス耐性のレベルは個々人で異なるため、企業の新卒採用や中途採用の際に自社の仕事内容に合わせて判断する必要があります。ストレス耐性のミスマッチがあると、入社後につらい日々が待ち受けているだけなので、お互いにとって良いことがありません。

採用面接で見抜くポイント

面接でストレス耐性を見抜くには、発言内容だけでなくノンバーバルな態度にも着目します(チェックリスト参照)。見た目に落ち着きのなさが現れているタイプであれば、経験を積んだ面接官が意識すれば分かります。
一方で、一見して寡黙なタイプの中には「隠れメンタル不安」タイプも存在するため注意が必要です。
よくあるミスマッチの理由として、「口数が少なく根性があるように見えたので採用してみたら、実は緊張し過ぎて発言できないだけだった」ということもあります。
よく知られているとおり、うつ病を発症する人も採用時にはうつではない、むしろ真面目で仕事ができそうなタイプが発症する傾向があるため、面接でメンタル不調の社員を思い浮かべながら見極めることは難しい面があります。
面接チェックリスト
  • 環境が変化した時に考え込むことが多い
  • 過去の失敗に囚われがち
  • 家族(自分も含む)や友人のことが心配
  • 些細なことも気になる完璧主義者
  • 目が合わない、視線が泳ぐ
  • 落ち着きがない、手足に動きが多い
  • 声のトーンが異常に高い・低い
  • 終始にこやかで真剣な表情が少ない、愛想笑いが多い

ストレス耐性を測れる適性検査を併用する

このように履歴書や学力テストからは読み取れないストレス耐性も、意識して評価することでトラブルの予防は可能です。
面接スキルのバラつきや、外見上判断しづらい一部のタイプへの対策として、ビッグ・ファイブのストレス耐性(神経症傾向)を直接測れる適性検査ツールを併用すれば見落としを減らせます。 ビジネス向けのビッグ・ファイブ性格検査をためしてみる なお、性格検査はエントリー段階で全員受検することが重要です。最終面接後に保険として使用しても、その段階では他の採用選択肢がなくなってしまっているため、機会損失が生じます。

仕事の厳しい面も伝える

チェックポイントそのものではありませんが、選考時に企業側から仕事の大変な面を伝えておくことも有効です。
組織論の大家スティーブン・P・ロビンスは、良い面ばかりでなく悪い面も事前に伝えておくことで入社後の期待値のズレを修正できると指摘しています [2]。また、ロビンスは、神経症傾向が強い(=ストレス耐性が弱い)人物は、長い目で見ると会社からいなくなっている、ということも述べています。

まとめ

大小さまざまなトラブル経験を経た企業であれば、チームの成功にとって結局は1人ひとりのストレス耐性が重要だということに気づいています。
そのため採用面接時のチェックを強化し、面接にくわえて性格適性検査を併用することが有効な対策になります。
個人のストレス耐性を企業と本人の両者が認識することで、お互いにストレスのかかる関係を避けようとしているのです。
このような備えが未導入の企業は、採用プロセスから見直した方が良いでしょう。人材の定着に難がある企業や、労務トラブルの多い企業は、現場が忙しいということで配属部署が選考に関わっていないケースが多々あります。
採用面接に時間を割くことが難しかったとしても、適性検査のレポートに基づいてコメントする、といった工夫の余地はあります。
採用と職場メンタルは原因と結果が時間的に離れているため、対策の必要性に気づきにくい面があります。原因に直接対処しないかぎり、トラブルは再生産され続けます。
参考文献
[1] ストレスとコーピング(R・S・ラザルス)
[2] マネジメントとは何か(スティーブン・P・ロビンス)
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