事業企画の転職、4つのポイント

  1. 社長の懐刀とは?
  2. 主な事業企画スタッフの役割と仕事
  3. MBAスキルでは不足
  4. 知られざる事業企画転職のポイント

事業企画は人気が高い職種である一方、適切な理解がほとんど進んでいない職種とも言えます。

ひとつには、「事業企画」「事業統括」「戦略企画」のように典型的な部署だけとってみても名称がバラバラであることに加えて、業種・業態によって営業企画であったり、製品企画部や商品部の特命要員であったりします。
また混乱に拍車をかけるように、経営企画部のなかに事業企画・戦略の機能がある場合も多々ありますし、逆に事業企画部でありながら仕事の役割は経営企画というケースもあります。

そのため事業企画職については、具体的な仕事の内容を理解して検討することが不可欠になります。

1:社長の懐刀とは?

事業企画職に共通する欠かせない要素として「経営者のスタッフであること」という点があります。

中規模程度の会社であれば、社長と直接仕事を進める懐刀(ふところがたな)的な役割を持っていることが多く、大企業の場合はCOOや事業部長、工場長などライン部門のトップに所属しているケースもあります。
また、経営者のうちCFOに所属するスタッフは経営企画となります。

大ざっぱにまとめると、既存ビジネスとして成立している製品・営業部門に各ラインマネージャーが主役として置かれ、その管理機能として経営企画があります。

事業企画は、ラインとして確立していないビジネスや、ラインの複数部門を横断するビジネスのプロジェクトマネージャーのような役割を持つスタッフと言えます。経営者が”次の一手”を打つ際の実働メンバーと考えると比較的適切なイメージを持てるかもしれません。

2:主な事業企画スタッフの役割と仕事

新規事業・事業開発
新規ビジネスの立ち上げはラインのミドルマネージャー任せでは進まないことから、経営トップが直接プロジェクトオーナーとして関わるケースは少なくありません。
新規事業ではビジネスの流れが定まっていないため、打つべき施策の種類と数が必然的に多くなるためハードワークに耐える実働の主役が欠かせません。新規事業スタッフはプロジェクトの進捗に応じて、市場調査・テストマーケティング・ブランド策定・物流立ち上げ・営業組織化など多彩な業務に関わります。

また、大企業であれば人材が豊富で立ち上げ体力があると考えがちですが、じっさいには新規事業のチームは少数精鋭の組織が典型です。ラインの人員は既存ビジネスを担当してそれぞれ業績目標を負っているため、新規ビジネス立ち上げ当初は限られた遊撃部隊でスタートするケースが多くなります。
企業によっては、テストマーケティング・フェーズを過ぎた時点あたりからクロスファンクショナル組織を形成する場合もあります。

アライアンス・事業提携
経営者の視点から考えると、自社にない資源は他社との提携による補完を検討する必要があります。
提携機会のレベルは多彩で、リスクを分担して新規市場を開拓するケースもあれば、既存ビジネスの1販促キャンペーンとしてのコラボレーションもあります。

提携・アライアンスの機能が事業企画に置かれることが多いのは、白紙の条件からスタートして、複数の企業が手を組める取引条件を柔軟に決める必要があるからです。
ライン部門のルールは既存ビジネスを前提として作られており、新たな提携案件では異なるルールで経営判断を求められます。

また、事業提携では他社とのトップレベル交渉という通常のビジネスにはない能力が求められるため、経営者自身がこの役割を持つか、事業企画の特命タスクとしてアサインされるケースが多くなります。

M&A・合弁
M&Aへのスタンスは企業ごとに大きく異なります。また、産業ライフサイクル論では、成長が鈍化した市場成熟期にはM&Aが進み、大企業が生き残ることが知られています。

M&Aや共同出資によるジョイント・ベンチャー設立は、より高度な事業提携と考えられます。
リスクとリターンの範囲が大きくなるため、M&Aにあたっては技術的にうまくやり切れることが不可欠になります。

計画段階の事業策定に始まり、実態検証のためのデュー・デリジェンス、買収交渉、PMI(Post Merger Integration)と呼ばれる買収後の組織統合・ビジネス管理など、長期にわたって特殊な役割を果たす必要があります。
多くのケースではプレミアムを支払って事業を取得することになるため、買収対象に間違いがないことの確認や、利益水準が向上するまでの実行力が強く求められます。

また、これ以外の幹部スタッフの役割として経営企画があります。「 経営企画の実態と6つのポイント 」を参照してください。

3:MBAスキルでは不足

事業企画の仕事内容からもうかがえるように、経営アイディアの実現には、交渉やマーケット検証などの多大な努力が必要となります。

いわゆる”MBAプロトコル”と呼ばれる財務分析や競争力分析などの机上のスキルは計画が破綻していないことのチェックや交渉の前提知識として必要ですが、実働の成否はむしろ地上戦で決まります。

事業企画に求められる能力は、主に職務経験の積み上げで獲得できるものであるため、ビジネススクールで習得できる知識では不足があります。同様に、ポスト・コンサルタントの転職も、経営企画職とは比較的高い互換性がありますが、事業企画職では事業会社の経験不足からむしろ敬遠される傾向があります。

なお、活躍するキャラクター像については「 事業企画の転職で活躍する人物特性 」で分析しています。

4:知られざる事業企画転職のポイント

事業企画職の難しい点は、キャリアの見通しは立ちづらい点です。
計画どおりにプロジェクトが進行すれば良いのですが、そもそも実現可能性の難易度が高い役割を負っていることから結果が見通せない側面はあります。
計画はするが実行はしない、という状況が続くと経験を積みきれないリスクが懸念されます。

また、経営の攻めと守りの必要性は局面によって変わるため、事業企画へのニーズも不定期に変わります。
そのため往々にして求人も非公開の求人になっています。
転職サイトなどの媒体に掲載されていない求人ニーズがあるため、じつは十分に機会を探索できないという構造があります。

結論として、必要とされる企業シーンにめぐりあうためには、優秀な転職エージェントと長期的な関係を築いておくことが最大のポイントとなります。
ビズリーチのような転職サイトで、履歴書と経歴書だけ書いて、待つのも一つですね。