営業の辛い業種ランキング~きついときは転職も考えよう

営業職は身体的にも精神的にもハードな仕事。
「ノルマがきつい」「ストレスやプレッシャーが」「激務」という本音は、転職相談でもよく会話にのぼります。

――― わかってはいたけれど、つらい。
――― 多分、自分は営業には向いてない。
そう思っている人は大勢います。

じつは、一口に営業といってもジャンルや業種ごとに事情が大きく異なります。
営業職では「ジャンルと本人の性格のミスマッチ」が頻繁に起こっていて、それが隠れた主要因と言えます。

1.営業はきつい?性格ミスマッチを分析する

1-1. なぜ営業職にはミスマッチが起きるのか?

営業はほかの職種と違って、専門スキルよりも個々人の性格などヒューマンスキルの割合が高い職種です。

また、営業職のなかでも、提案営業では緻密なロジカルさが重要な一方、新規開拓営業ではストレス耐性が必要とされるなど、ジャンルごとの適性キャラクターが異なっています。活動スタイルそのものが違うからです。

採用面接の際、性格面は伝わりづらいこと、曖昧なキャラクター適性を基準とする選考になりづらいことから、ほかの職種よりも不適合が起こりやすくなります。

また職種の人数が多いことに比例してミスマッチのトラブルも多いため「営業=つらい職種」という短絡的な結論に陥りがちと言えます。

実際には、それぞれの分野で活躍し業績を上げている人も当然います。
つまり、営業がきつい・つらいという問題は、本人がミスマッチを自覚して解消すべき問題なのです。

1-2. ケース別、きついシーンと解決のアプローチ

営業マンが仕事をつらいと感じるのは、ストレス耐性の低い方が新規営業を担当しているパターンが圧倒的に多く、以下、代表的な3ケースを紹介します。

① 断られること/嫌がられることが精神的にきつい
新規開拓にあたり、知らない相手に営業をかける→ダメでもともと、とわかっていても、何かを売り込もうとしても断られる、それどころか話すら聞いてもらえない、というのはストレス耐性の低い人にとってはそれだけできついものです。
この場合、相手と話すための前提が重要なことが多く、すでに取引関係のあるルート営業や、見込み客から問い合わせのある反響営業への転職が有効です。

② ノルマを達成できず、上司などに叱責されることがつらい
新規営業には高いノルマがつきもので、メンタルがタフでない人にはそれだけでもプレッシャーです。与えられたノルマをこなすことができない―――「最低限達成するべき基準」にすら到達できないのは能力が足りないせいだと自分を責めがちになります。
インセンティブよりもノルマに圧力を感じる人は、ルート営業や反響営業の方が安心して働けます。

③ 社内調整でもめるのがつらい
ルート営業の場合、既存取引先が優位な場合も多く、値引き要求なども多くあります。ルート営業では「無理な条件は受けられない」と素朴に伝えるのが王道の対処法なのですが、性格的に人が良すぎると断れない人がいます。
転職相談では「社内調整が…」と切り出すのですが、聞いていくと無理な要求を持ち帰って社内で反対され、板挟みになっているケースがほとんどです。
顧客先よりも社内の反対に合う人は、強引な要求の頻度が少ない反響営業の方が向いています。

1-3. 業種・業界別の特性とキツイ度ランキング

業種・業界や会社の営業スタイルによってそのつらさは実に様々。特徴とあわせてランキング形式で見てみましょう。

「ハード」であるという意味では、営業できつい第1位は不動産(住宅販売)・ハウスメーカー
一世代前であれば「(誰もができるわけではない)一生に一度の買い物」というのが常識であったマイホームの購入です。それを売らなければならないのがハウスメーカーの営業マン。

年間2〜3件の成約と考えても、業績の見えない日々が続きます。毎日何件も飛び込み営業を繰り返しては断られ、上司からは「売れるまで帰ってくるな」と叱責が飛んでくるなんていう噂のある会社も?
加えて、個人相手の営業であるため商談が平日夜や土日にならざるを得ないという時間的な問題もあります。
また、住宅販売では高年齢層の個人が顧客層となるため、話し好きの顧客が多く、かなりの時間を割かれます。

第2位は医療機器メーカー・製薬会社MR
こちらも仕事に長時間割くことがあるという点では同じ。相手にするのが病院や医師なので、限られた時間の合間を縫って商談をせざるを得ないためコントロールがききづらい仕事でもあります。また、営業先が病院や医師に限られるためにターゲットとする市場が狭く、既存顧客との良好な関係の維持が最重要であることがプレッシャーを高めます。
また、専門性の高い職種でもあるので医療関係者と対等に話せることが必要で、誰でも付け焼刃でできる仕事ではない、本格的な勉強も必要という点でもきついと言えます。

第3位は仕事のハードさで商社
商社では取り扱う商品のロットも大きく、商談が壊れるようなことがあれば会社にとっては大損害となり、営業マンの責任も重大です。さらに世界を相手にする営業ともなれば、外国とのやり取りでは相手国の時刻に合わせるためにもともと長い労働時間がさらに長くなったりもします。不眠不休で働く時期も間々あり、本気で仕事が好きでなければなかなか務まりません。
ただし、商社マンは採用時に厳選されることが多く、ミスマッチの比率は限定されています。激務であることは知られていながらも常に人気職種の上位を占める業種です。

そのほか、よくあがる業種をいくつか挙げたいと思います。
まず、先物取引業。
よくも悪くも?悪名高い業界で有名なので詳細までは説明しませんが、相手先に迷惑がられるという点ではトップ独走と言えるでしょう。
あとは人材派遣業と旅行業界。
人材派遣業は派遣先企業と派遣社員の板挟みになることも多く、旅行業界は特に交通機関の急なトラブルによる対応で各種交通機関や宿泊施設、それに旅行客との間で奔走することになります。いずれもクレームが発生しやすい業態で、精神的なハードさは極めて高い業種です。

他にも金融業界、広告業界、自動車販売など、様々な面できつい業界は多々あります。

2.営業職に向き不向きはある!向いてない人の特徴とは

ここまで営業職のジャンル別ミスマッチをくわしく解説してきましたが、営業職そのものに向いていないタイプもあります。

約束を守れないことが多かったり、遅刻がちだったり、物忘れが多かったりするルーズな人は営業職を避けた方が良いと言えます。

営業活動は業種やジャンルを問わず、大小さまざまな約束の積み重ねで成り立っているため、ルーズな人が約束ごとに取り囲まれると悪者になってしまいがちなのです。

ルーズになりがちな人は、ごまかしの生じにくいガテン系の職種や、軽作業の方がワークライフバランスを保ちやすい傾向があります。

どの営業マンにも必要な最低限の資質、それは小学生でも守れるような約束・ルールを破らない真面目さです。大多数の人には適性はあるのです。

2-1. 営業への苦手意識は克服できる

営業マンは職種人口の多い仕事ですから、最初は苦手意識があったとしても克服することは可能です。

ただし、その前提として、これまでに説明してきたとおり、ジャンルのミスマッチは解消している必要があります。

営業マンが板につくパターンはジャンル別に2系統に分かれます。

第1に、提案営業と新規営業の場合は、成果を出せた実感を得られることが苦手意識を克服するきっかけとなります。

インセンティブに魅力を感じ、見込み客に断られながらも一定の確率では成約をとれる、その確信を得られるだけのフットワークで活動量をかせげたときに苦手意識は消えています。

そして第2に、ルート営業や反響営業の場合には、顧客の要望・ニーズがあらかじめ存在する環境であるため、事情が異なります。

言われたことを社内に持ち帰って要望を満たし、会社のフロントとして顔を覚えてもらえた。または、何かのきっかけで顧客から声をかけてもらえた、というイベントをきっかけに苦手意識を克服できます。

同じ営業であっても、達成意欲の刺激で活動的になっていく提案営業・新規営業と、アットホームな環境に入り込んでいくルート営業・反響営業では、方向性がまったく異なるのです。

スキルアップで苦手意識を克服したい。

2-2. 異業種転職は有効だがジョブチェンジは危険

営業のつらさを解消するために、まず転職する、という選択肢は有力です。
営業マンのキャリア・転職では、活躍していることが問われるため、適合していない仕事で業績を上げられない期間が長引くことで先々のチャンスも目減りしていきます。

典型的には、新規営業でつらいと感じている人がルート営業に転身して地道に信頼を積み上げる、といったキャリアパスがひとつの突破口になります。

ルート営業の方が平均年収は低くなることが多いのですが、これは新規営業でバリバリ活躍しインセンティブを獲得している営業マンと比べたものであり、違うものを比べているのである意味妥当です。

年齢にもよりますが、ほかの業種や商品ジャンルの営業への転身は可能性があります。

ただし、職種を変えるジョブチェンジの選択肢はあまり現実的ではありません。営業以外の職種には特定の経験・スキルを前提とするものが多く、書類・面接を通過しづらい面があります。

3.まとめ

このように、営業活動がつらい、と感じる多くの場合には、ジャンルと性格のミスマッチが起こっています。

とくに新規営業系を担当している場合の不適合確率は顕著です。インセンティブよりノルマに気をとられてしまう場合には、適性を確認することが有効です。