年収1000万プレーヤーへの転職(2) 業種・業界別の状況

収益性の高い企業ほど、チャンスは大きい

年収1000万という水準を理解する第1のポイントとして「高い役職ほど会社の業績と連動した給与設計になっている」という大前提があります。

会社が存続するためには黒字であることが必要です。会社が倒産することなく付加価値を生み続けることをゴーイング・コンサーンと言いますが、この利益分配のひとつにマネージャーの給与があるのです。

このことから、収益性の高い企業ほど年収1000万プレーヤーを輩出する傾向が強い、という力学が生まれます。

企業規模別で見ると、1000万プレーヤーの構成比率は、大企業 > ベンチャー > 中堅企業の順となる傾向があります。国税庁の「民間給与実態統計調査」(平成25年分)によると、年収1000〜1500万の男性の比率は、資本金10億円以上で10.6%、1〜10億円区分の4.0%に続いて、資本金2000万未満の企業で2.8%となっている一方、中堅規模の2000万〜1億では2%を切っています。

なお、資本金10億円超の企業については、年収1000万円以上の給与所得者数が計100万人を超えていて内訳のプロフィールも比較的安定していると考えられます。平均勤続年数は約23年程度になっているため、大企業の1000万プレーヤーはおおむね40代半ば前後に到達する給与水準と言えます。

また、収益性のなかでも労働生産性、財務指標でいえば「従業員1人あたり粗利益」が高いことがとくに重要です。

労働生産性が高い高収益企業の要因はさまざまです。逆に、労働生産性の上がりづらい業種・業界ははっきりしていて、それは「差別化要素のない企業」です。

たとえば競合他社と違いのない商品を売っていて値引き合戦に巻き込まれている企業や、類似の業態が全国各地に存在している飲食業・サービス業などでは労働生産性を高めることは困難なのが実情です。中小企業のなかにも高収益なグローバルニッチ企業はありますが、これらの素人目にも違いの分からない業界では企業スケールが実力値となるため「無い袖は振れない」結論になりがちと言えます。

必ずしも1000万プレーヤー=どこでも通用する人材ではない

年収1000万は業績給であるということは、多くのケースで能力給ではない、ということでもあります。年収1000万円であるからといって、どこでも1000万を稼げるプレーヤーとは必ずしも言えないことはよく理解しておくべきポイントです。

企業はチームワークによって個人ビジネスでは達成できない付加価値を生み出しているため、年収の一部または大部分は”差別化されたビジネスモデル”が創出しているのです。

年収500万を超えるミドルクラス以上の役職では個人プレーが昇給の交渉材料にならず、むしろマネージャーとして視野が狭いとしてマイナス要因と評価される傾向があるのは、このような背景があります。

また、過熱した業界で人材の獲りあいになるような場合、一時的に高い年収で転職が成立してしまうことがありますが、これも能力給ではないことを考えると長期的なキャリアプランの観点では危険な傾向と言えます。

長い目で見ると業態ごとに妥当な収益性に落ち着く傾向があるため、ブームが去れば賃金も一般的な水準になることが当然の流れです。

ただ、年収が少しでも下がることを大きな損失ととらえてしまうアノマリー(非合理な判断)があることが行動経済学の研究で知られており、実際には長い目で見た年収デザインに失敗するケースが多々あります。

長い目でみた企業の収益性が年収と連動する

結論として、一過性ではなく高い利益を維持し続ける企業が年収1000万円超の機会をより多く生み出しています。

これは必ずしも、大手が有利、新しい分野であれば良い、ということではありません。たとえばハイテク業界として知られる半導体やパソコンメーカーといった業界では、ドッグイヤーと言われるほどのハイペースで新しい技術が登場しているにも関わらず、どんどん収益性が落ちて倒産が相次ぎました。

重要なポイントは、特定の分野で長期間にわたってその企業が優位性を持続できることです。

この考え方は、上場企業の場合は時価総額の評価の考え方とまったく同じです。一般的に時価評価の理論値はDCF法という評価で算出されますが、これは将来生み出す利益の予測から計算されています。

また、大企業が凋落している分野では、産業の新陳代謝が起こっていることも多く、ベンチャーなどの成長産業に着目することも必要です。

年収1000万円という高めの目標を考えたとき、個人的な環境の好みではなく、むしろ長期の業界トレンドに着目することの方がより重要なのです。

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