適性検査の比較・種類別ポイント

適性検査はそれぞれ測る内容が異なり、目的に応じた使い分けが必要です。 企業の採用手法として比較的利用されている検査方式のメリット・デメリットを分析すると、以下の表のようになります。
適性検査の種類別メリット・デメリット
評価項目 学力テスト 作業検査 性格テスト
テスト例 SPI 内田クレペリン検査 Decider®
大量採用スクリーニング ★★★
公正感高い

分析コスト大
★★
極端な例中心
地頭チェック ★★
平均付近に差がない

目的外
★★
資質ベース
メンタル不調のリスク特定 ★★
顕在事象に限る

現状ストレスのみ
★★★
潜在リスク検知
採用面接の品質UP
目的外

目的外
★★★
注目点の抽出
コンディション把握
目的外
★★★
今の意志力を反映

目的外
受検者の負担感 ★★
緊張感あり

理不尽感強い
★★★
気楽に受検
運用の手間 ★★
不正対策

紙運用・専門分析要
★★★
手軽なクラウド
速報性 ★★
集計まで数日

分析・解釈要
★★★
即時レポート
費用 4,000 - 5,000円/1受検 個別見積り 3,000円/1受検
(月額5万円)

面接を補完する性格テスト、スクリーニングなら学力テスト

比較のまとめとしては、採用シーンでは、利用の負担が少なく、面接で見極めづらいポイント(メンタルリスク、長期的な観点の資質)にヒントを得られる「性格検査」が適しています。 根強い人気を持つ「学力テスト」は、新卒一括採用時のスクリーニング(足切り)には向いていますが、採用力の強い一部の企業以外はそもそもスクリーニングすることで採用力が落ちる弊害もあります(後述)。 また、内田クレペリン検査が知られる作業検査方式は、持続的な集中力を測る独特のテストですが、まさに集中力が仕事の能力を決める業態に用途が限定されます。

学力テスト

学力面の知能は長期的な仕事の業績との相関性が比較的高い、という分析に基づいて主に新卒採用で幅広く利用されている方式です。ただし、この選抜が十分機能するには、幅広い母集団が集まったうえで、かつ、合格者を採用できる、という条件が必要です。 実際の採用では、企業知名度の制約上、そもそも母集団が偏りがちという課題があり、また、成績上位者は企業間で人気が集中して競合性が上がるため、結果的に採用しづらい層を選びやすい、というネックもあります。

性格検査

長期的な視点の資質・性格特性を多角的に知る方式です。潜在的なメンタル不調の要因など、仕事にとって外せないポイントを見逃さないために利用されるケースが多くあります。 また、対人特性や熱意など、学力以外の重要な業種・業態独特の資質を知るためには、性格検査が基本線となります。

作業検査

車両運転など、集中力が仕事の欠かせない危険業務分野で主力として利用されている方式です。その日の体調により結果が異なることが知られており、また、一般企業では集中力は考慮すべき指標のごく一部に過ぎないため、汎用性は限られます。

用途別に詳細比較

大量採用スクリーニング

まず、原則としてスクリーニングという手法じたいの有効性が低い、という点は押さえておくべき大前提のポイントです。書類選考や面接を含めて、あらゆる選考手法はいずれも長期の業績との相関性が低いことが知られています。 各検査には、ネガティブチェックについて得意領域があり、異なる検査手法を何層が組み合わせてフィルターするのが適切な設計です。強いて言えば、学力と仕事が連動しやすい分野で学力テストの汎用性が高いと言えます。 また、性格検査は学力テストでは差がつかないケースの補完として有効です。とくに新卒採用では、学力テストを導入しても学歴採用に近くなってしまうため、評価軸を多様化した方が得策なケースも多々あります。

地頭チェック

近年、"地頭"を重視する企業が増えており、面接選考でもフェルミ推定を採り入れるケースがあります。 基本的な意図としては、「学力とは異なる思考力を測りたい」という趣旨ですが、定義がないまま一律で計測することは難しいと言えます。 前述のとおり、学力テストは地頭とゆるい相関を持ちますが、一番知りたい平均得点(普通の人レベル)の差が出ないため、実務の活用には限界があります。 性格テストのうち、Deciderがベースに置いているBig5(主要五因子)では、知的好奇心がIQを発現する基礎力と考えられており、とくに採用上重視されている地頭・低(頭がかたく思考の柔軟性がない)については面接の所感とフィットする結果を得られやすい特長があります。

メンタル不調のリスク特定

積極的な能力資質の評価と並んで、企業が重視しているポイントにメンタル不調の潜在リスク検出があります。 メンタル面の特徴検出には、性格テストが相対的にもっとも安定した評価手法と言えます。とくに、うつ症状については、表面上は真面目で優秀な人が中心キャラクターであるため、学力テストで上位選抜するとストレス耐性の低いアダルトチルドレン型(大人の期待にこたえるため、地頭以上に努力でカバー)の含有率が高まる懸念もあるため、面接の要求スキルは上がります。 学力テストや作業検査では、受検時点で顕在化しているメンタル不調は著しい低得点として表れますが、そのケースは面接でも見抜きやすいため実効性は高くありません。
ストレス耐性・うつ傾向を見抜くポイント」で詳細を解説しています

採用面接の品質UP

採用面接の主な機能は「印象形成」です。多面的に人物を見ることが印象形成のポイントで、性格テストは受検者の個性をとらえて着眼点を増やせるため、面接の品質向上に役立ちます。 面接官ごとのスキルのバラつきが大きいという一般的な採用課題には有効な手法です。 学力テストなどその他の検査は面接プロセスへの貢献を目的としていません。

コンディション把握

時々刻々と変わる短期的なパフォーマンスの上下動を知りたい用途には、クレペリンなどの作業検査法が有効です。実際に、危険業務に携わる従業員の例では、安全と集中力の関係が密接であるため、クレペリン検査を定期的に実施するケースがあります。 学力検査、性格検査は長期的な視点で資質を測る手法のため、最新のコンディションを重点的に知りたい用途には向きません。

受検者の負担感

受検者の視点でもっとも気軽に利用できるのは性格テストです。思ったままに素朴に回答していくだけなので、多くの人はとくに抵抗感が少ないと言えます。受検者の負担は、採用プロセスからの離脱(選考辞退、他社決定)に直結するため、重要度の高いポイントです。 学力テストは成績を意識するためややハードルが高く、作業検査では負荷をかけることを目的としているため、受検者が「意味ない」と思うほど理不尽な印象をもたれる懸念もあります。

運用の手間

運用の手間を大きく左右するのは、提供形態です。導入前後の準備が不要なクラウド型ツールがもっとも手間がかかりません。従来ながらの紙試験は配布・回収や採点などが必要となるため想像以上に手間がかかります。 また、学力テストは不正対策も必要となります。性格テストの場合は、検査と面接時の発言の食い違いなどから問題を検出できます。

速報性

運用の手間と類似の傾向があり、クラウド型のツールが速報性が高いと言えます。 性格検査にもCUBICなど、紙のテストをラインアップしている商品はありますが、紙受検方式を利用する場合、採点に時間をとられるのと電子化にはデータ入力が求められる点には注意が必要です。 ビジネス向けのビッグ・ファイブ性格検査をためしてみる