若手抜擢・早期選抜のメリットとデメリット

早期選抜人事とは、次世代の経営幹部候補を若いうちからリストアップして、通常の昇進・昇格ルートとは異なる人材育成を行う制度を指します。
若手の抜擢を1度限りで終わらせるのではなく、体系的・継続的に実施することがポイントです。

米国上場企業で役員を歴任し、CEO選抜を含む人材育成に携わってきたラム=チャランは『CEOを育てる』で早期選抜の方法論を解説しています。

新卒採用から上級幹部になるまで平均25年、計5ポジションしか経験できないため、早期選抜は欠かせないと説きます。

その間になるべく企業の広範な機能に携わらなくてはCEOは務まらず、適切なCEOを育成できなかった企業は外部からの経営者スカウトという危機に直面します。

企業の創業者であれば会社のあらゆる仕事に直面せざるを得ませんが、組織化したあとで同様の経験を積むためには若手の抜擢によるしかないのです。

メリット・デメリットを比較検討する以前に、一定規模以上の事業規模を持つ企業にとっては、早期選抜は避けようのないMust条件である、という事実があります。

早期選抜導入のメリット・デメリット

典型的な日本企業のような年功序列・順送り人事の企業が、早期選抜制度を導入すると、どうなるのでしょうか?

早期選抜の要点は、将来CEO級になりうる人材を20代の時点で見極め、トップスピードで成長させることです。

育成プログラムを理想に近い状態で運営できた場合には、若く優秀なリーダーを獲得し、再生産できる能力をその企業は獲得します。

ただし、早期選抜では4〜5階級ほど飛び級しながら促成栽培するハイペース運営を行うため、そもそもその負荷に耐える人材が存在しない、または若い時点の選抜を見誤った場合、候補者のプールが全滅し枯渇するリスクもあります。

このように、成否に大きな不確実性があることはデメリットとも言えますが、幹部プールをウォッチすることで早期に白黒はっきりするという点はメリットとも言えます。

早期選抜を採らないとしてもCEOにかかるビジネス環境の負荷には変わりがないため、温存してきた幹部がそれに耐える人物であるかどうかは不明です。

ブラックボックスを事前に開けるのか、本番で開けるのか、といった違いでしかありません。
なお、抜擢人事に伴い降格が発生しやすくなりますが、準備を整えていれば問題ありません。

OJTのデザインが早期選抜のハイライト

企業の主要部署のポジションが希少資源であることは「 人材育成も採用から始まる 」で解説しました。

早期選抜制度では、主要ポジションへのアサインメント(異動)が、今日のビジネスにとどまらず幹部育成を優先して行われます。

将来CEOになり得る人物であれば1部署の長は若くして務まる、という発想です。

一見、ロジックが逆のように見えますが、けっきょくのところ選抜を実行できるかどうかは、企業が人材を早期に見極められる能力を持っているかどうかに依存しているのです。

人材を見極める力を獲得するためには、まずは客観的に各人物を記述できる能力を獲得することが重要です。

当社では、人物パーソナリティ記述に定評のある主要5因子のアプローチで人物分析する 適性検査ツール「Decider」 (ディサイダー)を開発、幹部選抜に活用できるリーダーシップ指標を提供しています。

OJTのアサインメント設計は早期選抜であるか否かに関わらず、人材育成の基本戦略であるため、従業員のポテンシャルを多彩な手法で可視化する努力は重要です。