降格人事のチェックポイント

降格人事は、企業の持つ人事権の1つとして認められており、権利関係上は解雇のように厳しい規制はありません。
心情面の不満は残りますが、基本形としては企業活動上必要なものであるため、従業員は納得できないとしても命令に従う必要があります。

ただし、いくつかの注意点はあります。1
降格を想定した就業規則や賃金体系を整備しておくことが、全体的なポイントとなります。社内規程に不安がある場合には専門家に相談すべきです。
(当社パートナーの特定社会保険労務士もご紹介可能です。必要に応じてお問い合わせください)

懲戒と能力不足のケースを切り分けて考える

パワハラや反社会的な行動など、問題行動に伴う社員の処遇については、懲戒規程の中で降格処分があることを定義する必要があります。

取引先との関係や、他の従業員の認識上、モラルに反する行動を起こしているにもかかわらず、管理職として居座っている、という状態は通常はとれないでしょう。

よって、いざという時に備えて、就業規則に適切に罰則を定義しておくことは事実上必須と言えます。
手落ちがないように規定し、事件があれば事務的に処罰します。

能力不足による降格は、基本的に企業の判断で実施できますが、ロジックをよく理解しておくことが重要です。
まず、企業の役職ポストは限られているため、より適切な誰かがそのポストについた時( 若手の抜擢 など)、元の誰かが降格するのは当然の流れです。
よって肩書上、たとえば部長でなくなる、といった異動にはとくに制約はありません。

多くのケースでは給料も連動して下がる、という考え方が自然でしょうが、給料が下がる、ということには多少の配慮が必要です。
労働者の経済権は労働基準法で保護され、無秩序に給料が下がらないよう規整されています。

賃金体系として、役職手当のように「部長を務めていることへの対価」が設定されていて、降格に伴って部長を務めなくなるので剥奪されるのであれば、事実その通りなので異論の余地はありません。

経済権の保護は、社会通念上、生活が成り立たなくなるような不利益変更を保護するものであって、役職手当がなくなっても基本給が他の社員と同等なのであれば特に問題ではないでしょう。

何であれ対象者は不満でしょうが、法律は不満に感じたものの全てを保護するものではありません。

ただし、基本給を減給する処分となると認識が変わるので注意が必要です。この点についても、専門家の指導に従ってあらかじめ現実に即した賃金テーブルを整備しておくことが何よりのポイントと言えます。

降格の原因である人選ミスには対処が必要

降格は事務的に実行すべきものですが、問題のある社員によるトラブルの元になりやすい人事でもあります。

降格を円滑に進める方法にばかり目が行きがちですが、問題の原因は過去の昇格がうまく行かなかったことから来ています。
昇格の人選ミスによる企業の責任はないものの、ビジネス機会損失などのロスはあります。

根本的な対策としては、従業員の人物分析の精度UPが不可欠です。
心理学の進歩により、従業員一人ひとりの違いは ビッグファイブ性格特性 で、きめ細かく分析可能になっています。

マネージャーに必要な資質は現場担当の能力とは異なるため、多くの企業で昇進ミス→降格、が起きやすくなっています。
ビッグファイブの組織分析ツール Decider®なら、昇進前の従業員分析が可能です。

またDeciderは採用ツールとしても統一的に使えます。
結局のところマネージャーの人材プールは採用段階で決まってしまっているため、採用と異動を一貫して分析できるツールが必要なのです。