働く女性の「管理職になりたくない」を考える│女性管理職のメリットとデメリット

「年齢的にもキャリア的にも中堅で、そろそろ管理職候補にあがる頃かも・・・」

バリキャリ女子というほどではなくとも地道にキャリアを積んできた結果、マネジメント層への入り口に差し掛かっている ――― そんな女性たちは「管理職」というポジションが現実味を帯びてくると次第に不安と戸惑いを抱くようになります。
ごく普通、あるいはほんの少しばかり仕事を楽しんでいる程度の自分と「女性管理職」というバリバリのキャリアウーマンのイメージが結びつかず、自分はそんな器ではないし、そもそもそこまで仕事人間になるつもりもない、と尻込みをしてしまうのです。

4月からは女性活躍推進法も施行され、多くの企業が女性の管理職・役員ポストへの登用を積極的に推し進めている中、肝心な女性社員との意識のすれ違いはなぜ起きるのでしょうか。
ここではそんな働く女性たちに向けて、

  • 普通の女子でも管理職ポストにつくことはできる
  • 女性管理職となることのメリットとデメリット

を中心に解説していきたいと思います。

※ 「転職もあり?管理職になりたくない、降りたい、辞めたいときの考え方」

1.女性管理職、なりたい?なりたくない?

ソニー生命株式会社が2016年2月に行った「女性の活躍に関する調査 2016」によれば、「管理職への打診があれば受けてみたい」との設問に対し「非常にそう思う」もしくは「ややそう思う」と回答した働く女性はわずか18.7%にとどまります。

なぜ管理職を志望する女性はこんなにも少ないのでしょうか。
まずはその原因を分析していきたいと思います。

そもそも女性には選択肢があるという社会背景

あくまでも一般論ですが、男性も育児に参加する、女性も社会に出て当たり前、と言われる世の中であっても、まだまだ男性が一家の大黒柱を担うのが「普通」の日本社会。
男性が「管理職にはなりたくない」などと言おうものなら(今は言う人もいるようですが)周りが眉をひそめそうなところ、女性には、管理職に「なりたい」「なりたくない」がどちらも選択肢として普通にあり得ます。
もともと出世欲・昇進欲とは無縁で、指導的立場への志向が全くない女性は無理して管理職を志す必要もなく、ガシガシ稼ぐこともない。

逆に、稼ぎたい人は稼げばよく、管理職・役員になるんだ!という、志高い人はそうすればいい。むしろ**「管理職になりたい」という女性の方が圧倒的に珍しく、古い考え方の人にはなかなか理解されない**かもしれませんね。

このように、女性が男性と同じように上のポストを志すことが一般的とはまだ言えず、いまだに女性が「不利」に感じることが多い社会背景が「女性管理職」へのハードルを高くする大きな要因のひとつです。

その「管理職になりたくない理由」はホンモノか

大半の女性が管理職になりたがらない理由は、以下のように主に「自信がない」グループと「そもそもキャリアを追求する志向がない」グループの二者に大別されます。

【”自信がない”グループ】

  • 自分はそんな器ではない
  • 性格的に向いていない
  • リーダーシップを取るのが苦手

【”そもそもキャリア志向でない”グループ】

  • そこまで仕事に打ち込むつもりはない
  • ワークライフバランスが取れないほどの働き方をしたくない

・・・など

さて、ここでひとつ問いたいと思います。
――― 果たしてその理由は、ホンモノでしょうか?

もちろん中には本当に適性がない人や専業主婦志向の人など、間違いなく「なりたくない」人も多いのですが、実は**「自分にはできないと思うから”なりたくない”」「管理職はバリキャリ女子がなるもので、自分はそこまでじゃないから”なりたくない”」**というように、真実かどうかわからない前提事実に基づいて「なりたくない」と言っている女性たちも相当数います。そして、そんな女性たちがいつの間にか管理職候補になってしまったりするのです。
もし自分がこれに当てはまると思ったら、ぜひ考えてみてほしいと思います。

例えば、管理職になるにはどんな「器」が必要なのでしょうか。
管理職に向いている性格とは、どんな「性格」なのでしょうか。「リーダーシップ」は必須の能力なのでしょうか。
さらには、管理職になったら必ずワークライフバランスが取れなくなるのでしょうか。

自信を持って答えられるほど「女性管理職」について理解していましたか?
答えが「NO」の人は、ぜひ一度女性管理職の実態を学んでみましょう。

全ての女性管理職がバリキャリ女子ではないという事実

「女性管理職」という言葉には、実に大袈裟で極端なイメージがつきまとっています。
いわゆる「バリキャリ女子」――― 仕事が大好きで仕事がデキて超意識高い系。普通の女性から見たら手が届かない憧れの存在、あるいはちょっと「引く」ような敬遠の対象・・・そんな風に思われがちなのですが、実際には至って普通の女性も多いのです。

もちろん企業の風土や業種・業態、職種にもよりますし、中には本当の「バリキャリ」が存在することも否定はしませんが、ものすごく器が大きくなくても、元来おとなしめの性格であっても、リーダーシップに長けていなくても、そして普通に家庭を持っていても、企業で管理職の務めをしっかり果たしている例はたくさんあります。

管理職になったからと言って、何も無理に男性と張り合って出世争いに巻き込まれる必要はないのです。課長になったら必ず部長に昇進しなければいけないわけでもなく、自分の任された部門を守り育てることに徹すればいい。
「そんな大きな責任は背負えない」という人もよくいますが、これまでメンバーとして自分の仕事を自らの責任で成し遂げてきた、その延長線上にあるのがチームとしての責任、つまり管理職としての責任。管理職候補となるまでに成長した時点で必要な力はある程度身についているもので、そこまで気負う必要もありません。

2.管理職になるとどんなことが起きるのか

さて、ここまでは女性管理職が意外と近しい存在であるということを述べてきましたが、多くの女性が「管理職になりたくない」という大きな理由がもうひとつあります。

それは、管理職というポジションに魅力を感じないということ。

これは本人の志向などの内部要因ではなく、社会や企業側の抱える課題が中心となる外部要因によるもので、ゆえに解消が難しい問題です。
前述のとおり、近年では男性ですら「管理職になりたくない」と言うくらいですから、地位や名誉に興味がなく現実的に考える女性が管理職を志望しないのも当然と言えば当然といえます。

が、管理職になることは何もデメリットばかりではなく、一般的には勘違いされていることも多いのです。

管理職に感じるデメリット、企業・社会に望む変化

さて、多くの女性が「管理職」に魅力を感じていない原因は企業や社会にあります。

① 社会の責任 ――― 出産した女性も本当は働きたい

ひとつには、女性にはいつの時代も普遍的につきまとう、妊娠・出産・育児の問題があります。
これは管理職に魅力を感じない理由というよりも「実質的に管理職に挑戦することができない理由」とも言えますが、女性にとっては最も大きな問題です。
管理職の仕事 をこなしながら人生の大仕事をやり遂げることは実際に至難の業。また、産休・育休を経て職場復帰するに際しても保育園不足や夫の育児への参加度合、実家の支援を受けられるかどうかなど、様々な要因によってその後の働きやすさには雲泥の差が生じます。

そんな中、ほとんどの企業が育児中の女性に重要な仕事を任せたがらず、結果として意図せず「マミー・トラック」(※ 女性が育児に伴う様々な制約のため重要な仕事を任されず、キャリアが停滞してモチベーションが低下し、最終的に退職に追い込まれる現象)に陥ってしまう女性がいることは残念なことです。

彼女たちの多くは別に産後に育児に専念したいわけではなく、妊娠中や産後に受けられるサポートの面で不遇なだけです。その間だけ勤務形態を変えることができればその後はまた頑張りたいという意向を持っていても、今の社会ではそのたった数年間のうちにそれまで積み上げてきたキャリアが崩れてしまう ――― これでは「管理職」に夢を抱くことなどできませんね。

一朝一夕に変わるものでもありませんが、企業側でも女性の力を活かすべく働くママへのサポート体制を充実させてほしいものです。
なお、既に独自の取り組みがなされている企業も存在し、限られた時間の中でも目覚ましい活躍を見せている女性も多数います。ライフステージの変化が起きた直後のタイミングでの転職はおすすめできませんが、結婚しても出産しても仕事を続けたいという若い女性の方は早めに検討してもいいかもしれません。

② 企業の責任 ――― 疲弊した空気が成長意欲を阻害する

次に、企業の責任として、「管理職に魅力がない」と感じられる企業においては、管理職に活気がないことが推測されます。
男性ばかりが管理職に就いていると女性としてのメリットを感じづらいこともありますが、実は男女の差などあまり関係なく、企業の体質が一番の問題です。
管理職がいつも忙殺され、責任を問われ、または部下に責任を押し付け、疲弊した空気が漂っているところを常日頃目にしていては、たとえ収入が少しばかり増えたとしても進んでその役割を受けたいとは思いません。

ただ、どんなに仕事がハードでも、管理職も一般社員も生き生きとしている職場というのは存在するものです。
こういった職場では、女性管理職が活躍していることが多いのをご存知でしょうか。

不思議なことに、女性には場の雰囲気を変える力と、その雰囲気を伝播させる力が備わっています。いい空気も悪い空気も伝播させてしまうため注意が必要ではありますが、空気が悪い会社ならその空気を自分が変えるのもひとつ。
たった一人の笑顔と前向きな心がけだけで周りが変化していくことは組織において間々あることです。自分がその発端になれたら素敵なことですね。

メリットもたくさん!女性が管理職になることで得られるもの

では、女性が管理職になることで得られるメリットとは、どんなものがあるのでしょうか。

① ワークライフバランスの幅はむしろ広がる

女性の活躍が注目を浴びる現代ですが、それでも経営層・マネージャー層はほとんどが男性で固められている企業が多いものです。
そのため、管理職と言えば男性というイメージで、つまり男性と同じような働き方をしなければ成り立たないという誤解につながっています。

確かに、管理職になって一般社員よりも仕事が減ることはありません。
しかし、家庭を持ちたいと願う多くの女性が「ワークライフバランスが取れなくなるから管理職は無理」と決めつけていることは少なくとも絶対の定理ではありません。

管理職になると裁量が増えるため、むしろ自分の仕事は自分でコントロールしやすくなったり自分のやりやすいように物事を進められるようにもなります。多少なりとも家庭を犠牲にせざるを得ない場面も出てきますが、その分家族と仕事のバランスを上手く調整できる技量も身に付き、やがて自分らしい働き方を見つけられるものです。

管理職=「周りの男性と同じように」ではありません。男女にかかわらず、自分なりの仕事の仕方を確立すれば良いのです。

② 仕事が楽しくなり、充実感を得られる

社内外から頼られることも増え、人脈も広がるでしょうし、自分が関わる仕事も一段上の水準に引き上がります。より俯瞰して物事を見られるようになるので、それまで一部分しか見えなかったことの全体像が見えてきたり、自分の関わった仕事が自分の手を離れてからどこにどんな影響を及ぼすのかなど、点ではなく線で理解することができるようになります。何事も「流れ」がわかると面白いもので、そこからは連鎖が起きるようにして自分の意識も知見も高まり、どんどん吸収したくなるでしょう。

③ 部下を育て、チームで成果を出す達成感が得られる

管理職になると部下を育てることが大事な役割のひとつになります。
部下の育成には細やかな対話が必須ですが、これは女性の得意分野でもあります。

観察眼に優れている女性は部下の些細な変化にも敏感ですし、会話のきっかけ作りも上手です。仕事を進める上で直接的には関係がなくとも、部下の様子や言動を見て聴いて気づくことができることは円滑なコミュニケーションに大きな助けとなります。

また、女性は部署を家族のような「仲間」としてチームワークを育てることに適性があり、その結果チームで成果を出すことができたときには何にも代えがたい充実感が得られるでしょう。

④ 女性であることを活かして会社に貢献できる

先に述べたとおり管理層は男性中心の社会であり、女性の存在そのものが新鮮味を生むことはもちろんです。加えて、女性は着眼点や大胆な発想力において男性よりも優れているとともに意見を積極的に発信することにも長けており、議論を活性化したり意見の多様性に貢献することもできます。

さらには、女性管理職が少ない、またはいない職場においては自分んが先例となって後に続く女性社員たちのために道を切り開くことも。女性特有の問題意識などは男性視点ではなかなか見えてこないものです。例えば、女性にとって働きやすい職場を創ることにかけてはどんな年配・目上の男性社員よりも有益な情報を提供できることでしょう。

これらのメリットは実際に女性管理職の多くが実感していることで、しかも統計によれば彼女たちの実に70%が「管理職になってよかった」と感じているそう。
女性は男性とは違い、仕事に求めるものとして地位や名誉・収入などよりも仕事内容や自分の知識向上・日々の充実感に重点を置く傾向にあるため、女性管理職にとっては一般社員の立場からは見ることのできない多くの「気づき」を得られることが仕事の醍醐味なのです。

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