【ポストコンサル】コンサルタント転職成功へのパス

シカゴ・コンサルティング 齋藤廣達 氏

序章.企業側のコンサルタント出身者への需要は増大している

コンサルタント出身者 ――― いわゆる「ポストコンサルタント」の転職が多様化し、チャンスが増えています。
コンサルタントの持つ仮説思考を含むロジカルシンキングや推進力・実行力、成果へのこだわりなどの素養が企業から広く求められるようになっているのです。

従前より外資系企業のマネージャー職などへの転身は一般的でしたが、近年では比較的先進的な日系大手企業における受け皿も拡大。
中でも、機会の大きい急成長企業ほどロジスティクスの面で課題を積み残している傾向が強く、インハウスのコンサルティング的な最適化プロジェクトへのニーズは断続的に発生し続けています。

1.コンサルタント出身者のキャリアパスの考え方

1-1. 若手のポストコンサル転職は経営企画職が多数

20代から30代前半までのポストコンサルタント転職では、事業会社の 経営企画部への転職 が多数を占めています。
経営企画職は企業における社長または経営者の右腕となり、「番頭」として任された指令を継続的にかつ的確に実行していく役割が求められる職種。コンサルタントの持つ特性と経験が活きることがその所以です。
なお、しばしば経営企画と同一視あるいは混同される「事業企画」への転職は、求められる素養が経営企画とは異なり同じコンサルタント出身者でも向き不向きが大きく左右するポジションです。

また、若手コンサルタントでもベンチャー企業に役員クラスで引っ張られたり、大企業の役員として迎え入れられたりするケースもあります。
その華々しさは注目を集めますが、役員・取締役とは本来極めて多方向への責任を負う立場であり、日本企業では特にハードルが高い役職。広い視点で俯瞰するとこのような成功ケースは稀です。

1-2. 40歳を想定してキャリアの積み方を考える

30代後半~40歳に達した頃、コンサルタントを続けているのか、事業会社への転身を選択しているのかによって、30代前半までのキャリアの積み方は劇的に変わってきます。

業界内の転職理由としては「現状以上の年収をもらえるか?」や「現状以上のポジションにつけるか?」とシンプルな条件しかないため、転職エージェントから提示される案件を見比べることは買い物のような選択です。

一方で、コンサルティング経験を活かして別職種への転職につなげる場合にはキャリアパスを考えない転職は禁物。

コンサルタントは一般的な職種に比べて転職回数も多く、一つひとつのキャリア選択がより重要になります。その選択を自らの責任をもって、土台から設計することが何より重要なのですが、ファーム間の業界内移籍と同じように、「転職」というよりプロジェクトを選択するような感覚に陥り、上っ面の判断になってしまう傾向が見られがちです。

コンサルタントはキャリア観点からの情報収集と自己分析を苦手とする傾向がありますが、転職となればこれを避けて通ることはできません。
コンサルタント以外の転職を考えるのであれば個人のキャリアパスに本質的な問題が積み残されている可能性を踏まえつつ、「新しい経験を求めての転職」を一度は選択することが必須。
難しいようですが、粘り強く考え続けることで必ず納得解を得られるものです。

「ポストコンサルで失敗しない転職のアウトライン」でも詳しく解説していますので併せてご覧ください。

1-3. 独立・起業はまったく別の尺度で考えるべき

ポストコンサルの進む道として、もうひとつ考えられるのが独立コンサルタントになる、コンサルファームの起業などです。
但し、注意が必要なのは、これはどの業界においても言えることですが、個人のコンサルタントとしていかに優秀であれ、起業となるとまた別の話だということ。優秀なコンサルタントは人脈もノウハウもあり、自身のビジネスをスタートラインまで持っていくことはできるかもしれませんが、その後も継続して事業をやっていくには、当然ながらアントレプレナー精神も経営手腕も問われるのです。

2.ポストコンサルタント転職事例 ―安易な選択が失敗を招く―

コンサルタントの転職ではキャリアを土台から形成する観点が必要で、安易な選択が危険であることは前述のとおりです。ここで、落とし穴にはまってしまったTさん(29歳男性、元コンサルタント)の事例を紹介します。

2-1. 転職までの経緯 ― 経験を活かし、新たなやりがいを求め ―

Tさんは大手コンサル企業のシニアコンサルタントでした。
コンサルティング実務経験も6年目。日々手ごたえを感じており、スキルにも自信がありましたし、社内はもちろんクライアント企業からも評価を得ていました。
しかし、コンサルタントはクライアントにとってあくまでも部外者。その立場からの関わり方に限界を感じ、事業会社のメンバーとして企業に貢献したいと考え始めるようになりました。

激務の中、なんとか時間のやりくりをして少しずつ転職活動をしたところ、比較的早いタイミングでとある事業会社からオファーが届きました。年収が100万円程下がってしまうものの、面接で会った上司とも相性が良かったこと、そして何よりもこれまでのコンサルタントとしての経験が活かせる業務だったことで、新たなやりがいを求めて、入社の意向を伝えました。

2-2. 入社して初めて気づいた事業会社の内部

Tさんは遂にこれまでのコンサルティング経験を、事業会社のいちメンバーとして総合的に活かすことが出来ると期待に胸を高鳴らせて転職先の事業会社に出社しました。

「まずは与えられた仕事をしっかりとやろう!」と意気込んでいたTさんですが、初日から薄々と感じていた違和感に徐々に気がつき始めます。

「事業全体を見渡す業務のイメージで入社したのに、これでは会社の中のイチ担当者だ・・・」 「朝令暮改は当たり前。しまいには自身の想定していた業務がなくなるとは・・・」 「経営層との距離が遠い・・・」 「同年代の社員と仕事に対する意欲や向上心にギャップがあり、話が合わない・・・」

これらの不満は、事業会社では当然とされているキャリアの判断材料をコンサルタントが持っていないことから来ています。
情報収集と自己分析の機会を持ち、長期的な視点及び生涯年収設計に沿った、ご自身の尺度を持って臨むことが何より重要なのはこのためです。

※ 成功事例はこちら「ハイクラス活躍人材のキャリア成功事例」

3.「積極的なキャリア選択」が、生涯年収を考えた転職成功のカギ

コンサルタントのキャリア問題の原点は、新卒時の就職活動にさかのぼります。
コンサルティング業界は、学生時代に「さまざまな企業を見てみたい」「後々つぶしがききそう」という理由で選択した人も多い業界です。

つまり、新卒で入った会社で定年まで働こうとする人がほとんどいないわりに積極的なキャリア選択をしていないことが、コンサルタント業界特有の悩みの種といえます。

学生時代に先のばしした自身のキャリアについて、いつ真剣に考えるのでしょうか?いつ自分がやりたいことが見つかるのでしょうか?
特にハイクラス人材においては転職のタイミングは極めて重要な位置を占めます。時期を掴めるかわずかに逸するか、それだけで生涯年収にも多大な影響を及ぼします。

実例から考えると「ネガティブな理由で仕事が続けられなくなった」「子どもが生まれた」「親の介護が必要になった」などの人生の節目となるような急激な変化をきっかけに、真剣に考える機会を初めて持ったというケースが多くあります。「つぶしがきく」と考えて選択したコンサルタント業だったはずなのに、タイミング次第では転職年齢がネックとなり選択肢がむしろ狭まることが現に起こっています。

コンサルティング業界は激務であることが多く、自身のことを振り返る時間を意識的に創り出すことは困難な状況もあります。また、比較的年収が高いので、金銭面の理由から他業界に転職するメリットが考えにくいこともあります。

給料やポジションなど、測りやすい尺度にとどまらず、夢ややりがい、ワークスタイルも含めた多軸な評価のための情報を得ることが、バイアスを克服するポイントになります。