【完全版】営業とは何か―営業の本質と真髄、その全てを学ぶ

営業職は 「きつい」「帰れない」「給料が安い」 と、いわゆる新3Kのイメージ先行で語られることもありますが、「稼いでいる」というポジティブなイメージもあります。

会社から営業職に求めるのは、何をおいても**「売上目標の達成」**です。
「お客様との関係構築」「顧客ニーズのヒアリング」「提案資料の作成」「新商品・サービスの企画立案」「社内リレーションの向上」「コスト削減」などはあくまで付随要因で、売上目標が未達では認められることはありません。

目標達成のために必要なことは何なのか、営業にまつわる周辺の基礎知識から1つずつひも解いていきます。

序章.営業マンの日々 -新3Kの真実と日々の楽しみ-

1. お客様と顔を付け合わせてナンボ

冒頭に触れた新3K(「きつい」「帰れない」「給料が安い」)。
どれも、 営業職だから当てはまるとは言えません。 業界・業種の特性もありますし、もっと言えば企業体質と直結する要素も強いためです。

ただこの中で強いて言えば、営業は「帰れない」傾向はあります。
なぜなら、日中は「顧客」や「見込み客」と言われる「お客様」と会って商談することに時間が割かれるためです。

そのため、お客様が終業時間を迎えた後にようやく帰社し、当日の商談のアフターフォローや次の商談の準備をしなければならないため、夜遅くまで仕事をしているケースが往々にしてあります。

営業職の多くは、1日に複数件(2~100件)ものお客様のところに足を運びます。(高単価商材を扱っている営業は異なりますが)
既存客であれば、電話やメールで新商品・新サービスを案内して売れることもありますが、基本的には顔を合わせてナンボの世界です。
なぜなら、商品やサービスが最も欲しいものではなく、「信用・信頼」が欲しいからです。

インターネットと携帯電話が普及して、商売の流れやカタチが大きく変わりました。
商売の流れは、情報伝達スピードが上がったことで圧倒的に速くなり、カタチも「顔なじみ」「昔ながら」が通用しない時代に突入したのです。

「そこそこの商品・サービス」であれば、インターネットを介して大概のものは手に入ります。
つまり直接買いたいのは、少し高く払ってでも「信用・信頼」できる人や会社から買いたいのです。

最も有効な手段は会って話すことです

営業マンであれば、お客様のところに積極的に足を運びましょう。これは、自分が売りたい時だけではなく、用がなくても、問題が起こったときでも同様に言えることです。

営業で楽しく働きたい

2. 残業は必然!?残業代はもらえるのか!?

さて、帰るのが遅くなりがちな営業職。気になるのは、残業の多さと、残業代ですね。

先ほどお伝えした通り「18時以降にようやく帰社する」というのが王道ですが、「お客様と夜や土日のお付き合い」もあり、残業が多くなりがちです。

「それなら、残業代で稼げそう!」と思うかもしれませんが、残念ながらそう上手くはいかないのが現実です。
なぜなら「みなし労働時間制」という、労働基準法にも定められている制度があるためです。

詳しくは割愛しますが、社外に出て営業活動している場合、雇い主として管理が難しくなるので、一定の勤務時間と定めてそれに値する賃金を払ってしまうことで、残業代ではなく「営業手当」などで充当されるためです。

ただ、“管理”されている場合には、残業代をきちんともらうことも可能ですので、みなされた勤務時間と現実がかけ離れている場合には、対策した方が良いでしょう。

3. 営業マンの密かな楽しみとは

マイナスなイメージも多い「営業職」ですが一転して、営業マン・営業ウーマン・営業女子の楽しみをここではお伝えしましょう。

色んな人に会える -イケメンや美女にも会える-

人好きが嘱望する職種だけあって、色んな人に会えます。
「人生の師匠」と呼べるような素晴らしい出会いもあれば、幼少期の懐かしい幼馴染に思わずばったりなんてことも。「実は、客先にハンティングされて・・・」という転職経験をもつ営業マンも多く存在しています。

何と言っても、最大の楽しみは、イケメンや美女に会える可能性があることです。あまり“お客様と恋愛に結び付いた話”は聞いたことはありませんが、モチベーションアップや目の保養になることは間違いありません。

意外と実例が多いのが、お客様(商談相手)ではなく、客先の受付嬢との恋愛話。「プロスポーツ選手とアナウンサーとの関係と同じレベルのあるある話」と言えるかもしれませんね。

色んな所に行ける -グルメにはうってつけ-

日常的に出張や移動が多いのが営業職。その分、慣れるまで準備に時間がかかったり、体力的にも堪えますが、「業務として小旅行に行ける」とも言えます。

社会人になると、なかなか旅行に行く時間やお金を使うことが難しくなりますが、営業マンは別格です。出張先で営業活動の合間に、観光名所に立ち寄ることも可能です。

出張があまりない企業もありますが、営業をしていれば必ず楽しみな行事があります。それは「食事」です。

営業活動として外出してしまえばこっちのもの。商談時間に遅れないように気を付けながら、好きな場所で好きな時間にランチでがとれます。
グルメな人は、ランチ場所を徹底的に調べてアポを取るなんて人も聞いたことがあります。

事務所の中で息が詰まりそうな人は、開放的に仕事ができるという意味で、営業職が向いているかもしれませんね。

勤務時間もコントロールできる

前章の残業代の時に触れた通り、みなし労働時間制が適用されていることを逆手にとると、自分で勤務時間をコントロールできる可能性もあるのです。

いわゆる直行(自宅から会社に寄らずに客先に直接行くこと)・直帰(客先から会社に戻らずに直接帰宅すること)が許されているのも営業の特権です。

自分の力次第で勤務時間内を圧倒的に効率化して勤務時間を減らすことも可能なのが、営業職の魅力の1つです。

2.営業の「難易度と年収」「難易度と離職率」は比例する

営業職に関連するところでは、「年収」「離職率」についてよく質問をいただきます。
営業職では全体的に年収も離職率も高いのですが、実はどちらも先ほどの「難易度」に比例します。

2-1. 営業職の年収   ―法人営業×無形商材が高いけど保険や不動産も―

年収でいえば、当然ながら難易度が高い方がより専門的知識や専門スキルが必要になる上、営業活動としても1件の発注をとるのに時間も手間もかかるため、その分年収が高くなります。

あくまで一般論ですが、難易度ランクが上がるごとに年収が50万円ずつボトムアップするイメージで、下記のような感じです。

● 販売職:年収200万円~
● 対個人営業×有形商材:年収250万円~
● 対個人営業×無形商材:年収300万円~
● 対法人営業×有形商材、対個人営業×特殊商材:年収350万~
● 対法人営業×無形商材:年収400万~

なお、難易度が上がると振れ幅も大きく異なり、一概には言えませんが最上位ランクの対法人営業×無形商材のうちコンサルティング関連、ITシステム、マーケティング関連、金融・会計サービス、広告業界などでは年収1000万円を超える人も多くなります。
また、業界平均としてそこまで年収が高くないですが、インセンティブが大きく、営業マン個人へのバックが大きい保険業界、金融・証券業界、不動産業界は稼げる業界です。

なお、これらの業界で稼ぐための秘訣については、「 年収1000万円プレーヤーへの転職 稼げる営業になるカギとは 」で詳しく触れていますのであわせてご覧ください。

業界に特化したものでなく広義の異業種転職を考えている人は、コチラの記事を参考にしてください。

2-2. 年収が上がる資格とは -営業職で深く広く活躍するためには-

営業職で、業種・業界での年収の違いをお伝えしましたが、実は自分のスキルを上げることで年収を上げることも可能です。
その1つのカテゴリとして、資格についてお伝えしましょう。

営業職で、幅広く通用する資格(スキル)は大きいもので2つ。さらに業界によるものが2つあります。
最大のスキルは、英語(外国語)です。

2000年代に入る前までは、商社以外に海外で商売をしている企業はごくわずかでした。
しかし、日本市場の不況とインターネットの普及とともに、企業の海外進出が一気に進み、「海外進出できなければ発展はない」とまで言われるほどになりました。
その前線となる営業職でも当然英語が求められてきています。TOEICであれば700点以上あるとアピールになります。

もう1つは、中小企業診断士。
99.7%が中小企業と言われている日本。あまり耳にしない資格かもしれませんが、中小企業の経営課題に対して診断や助言をすることができるため、「信用・信頼のアップ」には一役も二役も買うでしょう。

業界・業種によって、資格は色々とありますので、詳しくは「 【営業のスキルアップ】転職にも有利な資格・検定ランキング! 」をご参照ください。

2-3. 営業の離職率 ―営業マンはデキる人もデキない人も辞める―

年収と同じく難易度が上がるほど、離職率は高いです。
難易度が高いため、デキる営業マンとデキない営業マンの差が歴然と現れてしまうのです。

ハードルが高い=年収が高い=離職率が高い・・・非常にわかりやすい図式ですね

ただ、独立・起業する人が多いのも難易度が高い営業で成功した人の特徴です。 つまり、難易度が高い営業は、成果が出ない人も辞めるし、成果を出した人も辞めるという構図になるため、離職率が高くなってしまうのです。

今、営業がつらい、向いていないかなと感じている人は、「 営業のきつい業種ランキング~つらいときは営業からの転職も考えよう 」を参考にしてみてください。現状から、一歩踏み出せると思いますよ。

転職は少し考えているけど、志望動機の作り方や考え方がイマイチわからない人もいると思います。そんな人には「 【営業の転職】本音はあり?「転職理由」「志望動機」例文集 」がおすすめです。

次ページは、営業の本質についてです。

3.「営業」とは、顧客と自社の双方に利益をもたらす職業である

さて、ここまでは「営業」について形式的な部分をお伝えしてきました。
広義では「営業=企業活動」と捉えることもできますが、一般的には「営業=営業職」を指します。

では、「営業」という職業の本質はどういうものでしょうか。

営業とは、
・顧客に対して価値を提供し、
・顧客と自社双方に利益をもたらす

ことを本来の目的としています。かなり概念的な話ですが、業種・営業手法にかかわらず全ての営業職の果たすべき役割はこの2点に集約されているといえます。

特殊な知識や技能を要することではないため、営業職が未経験でもチャレンジしやすいフィールドであるといわれる所以でもあります。

これを詳しく見ていきましょう。

3-1. AIDMAの法則 ―顧客側の視点で「営業」を考えてみよう―

「営業とは?」と聞かれると、うっかり答えてしまいそうなのが、自社の商品やサービスを売ることですが、残念ながらこの回答だと0点。営業活動の結果の1つにもちろん「自社の商品やサービスが売れること」がありますが、営業行為は決して自社の商品やサービスを売ることではないのです。

まず、買う側の立場に立って考えてみましょう。
自分が商品やサービスを購入する時は、どのような思考回路で購入に至りますか?

そこにある商品やサービスを見て、いきなり「これを買おうか買うまいか」と考える人は圧倒的にマイノリティで、そこに至るまでの間にはいくつかの段階を経ているのが普通です。

購入行動に至るまでのプロセスの考え方で有名なのはAIDMA(アイドマ)の法則
Attention(注意)⇒Interest(関心)⇒Desire(欲求)⇒Memory(記憶)⇒Action(行動・購入)という5段階を経て購入に至るという考え方です。
要するに、商品やサービスを認知し、感情を揺さぶられ、購入・消費行動に至るというステップを踏むということです。

「営業」を「自社の商品やサービスを売ること」と考えている人は、「自社の商品やサービスを説明している人」になりがちです。つまり、商品やサービスを顧客に認知させているに過ぎず、購入までのプロセスの第一段階で止まってしまっています。
商品やサービス自体の付加価値が高かったり、他との差別化が図れているような場合は、その後のステップが自動的に顧客の中で進んでいき購入に至る場合もありますが、それでは営業マンはいらないのです。

3-2. 提供すべき「価値」は商品・サービスだけではない

もちろん、顧客に対して一次的に提供する「価値」は自社の商品・サービスそのものです。これは営業マンとして主たる目的であって、顧客側も商品・サービスの提供を受けることを最終目的として取引をするわけです。
ただ、実は顧客側においては、商談を通じて潜在的に求め、感じている価値が他にもあります。
それは、”タイミング価値””ブランド価値””付帯サービス価値””営業担当価値”の4つ。これらはあくまでも商品・サービスに上乗せされる付加価値で数字には表れないものですが、これらによって顧客が商品やサービスそのものに更なる価値(AIDMAの法則でいうところのI(=Interest)とD(=Desire))を感じることができ、取引成立にもつながるのです。
これらの付加価値をいかに高めるか、ということこそが営業職の醍醐味ともいえます。

3-3. 「モノ」ではなく「コト(=ソリューション)」を売る

前章の内容にも関連しますが、営業は「顧客に商品やサービスを売り、自社の利益を稼ぐ」それだけの仕事ではありません。
営業の本質は、「顧客の利益を増やすことで自社が利益を得る活動」です。
きれいごとに聞こえるかもしれませんが、これは営業手法やスタイルこそ違えど優秀な営業マンなら誰しも実践していること。つまり、自分や自社の都合だけを考えて行動していてはいつまでたっても売れる営業にはなれないのです。
顧客の利益を増やすには、顧客の視点に立って顧客のためにどういうコトが出来るか(=ソリューション)を徹底的に考えて提供することが必要です。
「モノ」ではなく、「コト」を売る。
それが、顧客の課題解決につながることで利益をもたらすこともあれば、顧客の新規市場開拓のきっかけとなって利益を生むこともあるでしょう。

自社の利益は必ず、顧客の利益の上に成り立っていること。
これを忘れずに実践することが、営業職の本来果たすべき役割であるといえます。

4.営業の「仕事」は7段階のプロセスを踏んではじめて完結する

さて、営業の「本質」についてわかったところで、今度は具体的な仕事内容に移ります。
実は営業活動というのは「商談する」⇒「売る」だけではなく、細かく見ると7段階ものプロセスから成り立っていることをご存知でしたか?
以下、順を追って見ていきましょう。

4-1. プランニング(情報収集と仮説設定、顧客の想定・リスト化)

まずとりかかるのは、いわゆるマーケティングです。プランニングが弱いと、どれだけ後工程の能力が高くても的外れな行動となり、成果が出しづらくなります。そのため近年はこのプロセスが重要視される傾向にあり、企業によっては「マーケティング部」が営業とは別にあるなど分業されていることも。

4-2. アプローチ(リード獲得)

次の段階はアプローチです。
アプローチとは「リード(=見込み客)」を得る手段であり、主に以下の2種類の手法があります。
アウトバウンド・・・いわゆる飛び込み営業やテレアポによる能動的な手法
インバウンド・・・広告や口コミ、ホームページ、チラシ、DMなどで網を引き、見込み客側から問い合わせをもらう受動的な手法

4-3. ヒアリング(ニーズ把握・明確化)

見込み客との間での対話(対面・電話・メール等)を通じて状況や課題・悩み・問題点を聞き出し言語化し明確化します。このとき、見込み客側がすでに認識している顕在的ニーズだけでなく、意識していない潜在的ニーズを引っ張り出せるか、気づけるかが最大のポイントになります。

4-4. プレゼンテーション(解決策の提案)

一般的に”営業”と認識されている商談・交渉の場であり、営業の「本番」です。
ヒアリングで聞き出したニーズに対してソリューション(解決策)を提案します。ニーズがずれていれば第一段階からやり直し、解決策が弱いと改善した上で再提案(場合によってはリトライできないことも)となります。4-1から4-3までのプロセスにおける手腕が試される、重要かつ厳しい工程です。

4-5. クロージング(解決策の合意・契約の締結)

さて、プレゼンテーションが終わり、いいね、欲しいね、などの言葉だけでは、当然、双方合意に基づく売買契約に至ったとは言えません。「発注書」「契約書」「申込書」など正式に書面による契約を交わし、代金をもらってはじめてクロージングできたと言えます。きちんと、入金管理まで追うことも大切です。

4-6. アクション(商品・サービスの納品・実行)

クロージングで満足して油断することなく、合意した期日(納期)までに商品・サービスを納品・実行まで責任を持つことも営業マンの仕事です。ここでミスをするとせっかく太鼓判を頂いた商品やサービスが逆にクレームとなり、訴訟となる可能性も。

4-7. アフターフォロー

最後のステップは顧客の満足度(利益)を最大化するため、アクション後もしっかりアフターフォローをすることです。商材や業界によってはリピート購入もあり、おざなりになりがちですが、最後の最後で顧客満足度を下げてしまわないためにも徹底すべき重要な工程です。

7ステップのプロセスについて、イメージできましたか?
全体の流れを俯瞰して見ると、営業の7プロセスはビジネスの基本と言われているPDCAサイクルそのものです。
営業には商品知識やコミュニケーション能力なども必要になりますが、基本的にはこのPDCAサイクルを回すことで成果を出すことが仕事であるため、未経験でもチャレンジしやすい職種となっています。

次のページは、デキる営業とデキない営業の違いです。

5.デキる営業とデキない営業の違いは3つの能力の差にある

PDCAサイクルを回すことで成果を出すのが仕事―――
では、デキる営業とデキない営業の違いはどこにあるのでしょうか?

いわゆるソリューション営業、企画提案型営業、コンサルティング営業などと呼ばれるスタイルの営業は、7ステップをきちんと完結することではじめて成立する、ハードルの高い「提案営業」に属します。
中でも、見込み客の欲求を揺さぶり購入(行動)に至らしめることができ、顧客の課題・悩みを自社の商品・サービスで解決できる力がある営業マンがいわゆる「デキる営業」と呼ばれるわけですが、デキる営業マンたちはある特定の能力を持っていたりします。

それは、「顧客の真の課題・悩みを見出す力」、「課題解決能力」、そして「プロセスマネジメント能力」です。
ひとつずつ解説しましょう。

なお、デキる営業マンの特徴については、 「決定版。営業職の転職で活躍する人物特性」 でも紹介していますのであわせてご覧ください。

5-1. 顧客の真の課題・悩みを見出す力

他社の人間に対して課題や悩みを理路整然と話してくれる人はほとんどいません。
話す気があっても、実際には自社の課題や悩みを正確に認識していない、あるいは認識していても他人にわかるように言葉にすることができないという問題もあり得ます。

従って、「聞き出す力⇒傾聴力」と「洞察力」、そして整理されていない「主観的」「表面的」な情報を糸口にとことん聞き出し、社内や相手の様子を見ながら真の課題を導き出す力が絶対的に必要になります。

5-2. 課題を解決する能力

課題解決能力は、複雑な要素で成り立っています。
まずは顧客周辺から集めた情報から「フレームワークを組む力」。まずは全体を整理して俯瞰して状況把握をする必要があります。全体像が見えてきたら「分析力」「戦略立案力」と「論理的思考(PDCA)」で組み立てて提案していく流れになります。

5-3. プロセスマネジメント能力

これは大前提ともいえる能力なのですが、先ほどの7つのプロセスをしっかり回す力、つまり「やりきる力」を指しています。

但し、「やりきる力」とは言っても、自分ひとりで全ての作業をやりきる、ということではありません。
フロントに立って全てのステップをしっかり管理して、完結できるかどうかです。
つまり、顧客との交渉など商談の場面は当然営業マン自身がやるものの、例えば部下・他部門の人に任せることは任せつつ進捗はしっかり追うなど、人を巻き込みつつ自分がそのマネジメントをすることができるかにかかっているのです。

6.営業の真髄は「顧客の創造」

さて、一般的には営業の真髄と言われている「顧客の課題・悩みを解決する提案営業」ですが、「デキる営業」と呼ばれるタイプの営業マンには更に上がいます。

それは、「顧客にとって全く新しい価値観や潜在的ニーズを喚起し商品やサービスを創造できる営業マン」。
正に、「顧客の創造」が営業の真髄なのです。

6-1. 顧客の創造は営業マンの市場開拓ゲーム

企業の存在意義を「顧客の創造」と唱えたピーター・ドラッカー氏の原文では「create a custmer」と表現しています。1人の顧客を創ることが市場を創り、それができる企業にこそ存在価値があると言っているのです。

1人の顧客の創造・・・それは営業が出来ることではないでしょうか。

その行動がさざ波を起こし、ひいてはビックウェーブになり市場が創られるのです。目の前の1人の顧客の価値観を変える提案をコツコツとやり続けていくことが大事なのです。そのためには、前述の「常識や固定概念にとらわれない力+発想力」「やりきる力」「チャレンジ精神」が必要になります。ただし、いきなりこれらの力が備わっている人はごく稀で、訓練しなければこの力はつきません。まずは意識することが大切です。

自分たちの商品・サービスと直接的に結び付く顧客も大切にし拡大していきながら、連想ゲームのような感覚で常識的には結び付かない顧客群にも目をつけてアタックをしていくのも1つです。

経営戦略論やマーケティング用語に『ブルー・オーシャン戦略』というものがあります。これは、フランスの欧州経営大学院教授のW・チャン・キムとレネ・モボルニュにより発表された著書『ブルー・オーシャン戦略』により提唱されたもので、特に日本人に好まれている言葉です。

競争の激しい既存市場を「レッド・オーシャン(血みどろの激しい争い、血で血を洗う市場)」と表現したのに対して、競争のない未開拓の新しい市場を「ブルー・オーシャン(競争相手のいない市場)」と表現したのです。提唱された戦略では、具体的な方法論にまで触れており「高付加価値を持つ新市場の創造」に主眼を置いています。

本来「ブルーオーシャン戦略」は経営戦略なのですが、企業が大きくなればなるほど外した時の影響が大きく、投資が難しくなるもの。それを一営業が実践するることが自分だけでなく、会社にとっても非常に大きなヒントになるのです。

6-2. 顧客の創造を通して見えてくる将来のスキルアップ

やり続けていると、まずは1人の顧客を創ることができます。そうすると、不思議なくらい後から追って受注してくれる顧客が続いて出てきてくれるようになります。このようなアクションを一営業のうちからやっていると、新規事業を任されるようになったり、数字やマネジメントスキルも上げていくと経営企画や事業企画、営業部長などへの道も拓けてきますし、ゆくゆくは子会社含めた社長・・・というのも見えてきます。

営業からのキャリアパスとして、マーケティング部門や経営企画部門の職種への転職は年収アップにも繋がっていきます。インセンティブが大きい業界で、トップセールスとして活躍し続けることも稼ぐ営業の1つの形ですが、年齢による体力低下などの身体的能力の低下を鑑みると、営業としてではなく新規事業や経営企画、マーケティングといった部門へのステップアップが成功ケースとして多く見られます。

営業から新規事業企画や経営企画、マーケティング部門へのステップアップには、顧客の創造による市場の創造にプラスして売上だけではなく、”利益”を考えられるようになる必要もあります。新しい市場を創ることには、当然コストもかかります。費用対効果(ROI)を意識することも忘れてはいけません。

冒頭に述べた通りに、それほど営業とは、経営や事業を作り出すことや動かすことに直結する仕事なのです。この意識レベルで取り組むことで、自身の成長スピードが他を圧倒するだけでなく社内でも一目置かれ、出世への階段を上ることにもなりますし、いざ転職という時もステップアップした転職など自分で描くキャリアに沿った転職ができます。もちろん起業を一つの道として選ぶ人も多いです。

また、自分を知るには、内省と対話が必要と言われています。 ビズリーチなどで、レジュメを登録して待つのも一つです。

次ページは、女性営業職で活躍するポイントです。

7.女性営業職で長く活躍するのに必要なこと

ここまで営業職について幅広くお話ししてきましたが、女性に特化したお話しをしようと思います。
女性ならではの強みや悩みなど、深いものがあります。

女性営業職で転職を考えている方は「 営業女子・営業ウーマンの転職 成功の秘訣とは 」をご覧ください。

営業女子を部下に抱える管理職も必見です。

7-1. 営業女子・営業ウーマンになれたらラッキー

営業=肉体労働、負担が大きい仕事というイメージが先行がちな営業職。酸いも甘いも触れてきましたが、“女性にとって”どんなプラスとマイナスがあるのか、核心に迫ります。

表題の通り、女性であっても営業職に就くことをおすすめします。
それは、20代、30代、40代と年齢を経ても通用する経験・スキルを得られ、人生を明るくことが間違いないからです。

「今を楽したい、楽しみたい」という人は、自分が楽できそうな職場を選べば良いでしょう。しかし、年齢を経た時に「まともに仕事がしたい」と思った時には手遅れで就ける仕事がなく、フルタイムで働けるけどパートタイム勤務に・・・という人や、生活環境としてノマドワーカー・在宅勤務で働きたいけど企業側の要望に応えられない・・・という人を数々見てきました。後悔しないためにも、早い段階で営業職に就いた方が良いと断言しておきます。

ではどんなメリットがあるのか? 男性と比べて共感性や協調性、親和性が高い傾向にあり、往々にしてコミュニケーション能力が高くなる可能性を持っています。

ケンブリッジ大学の研究者グループによると、男の子と女の子を比較した時に、女の子は生まれつき「人の顔」に興味を持つことが目の構造からもわかったそうです。
性として母となる女性は、子を守るため人の群れの中で生きるための術が発達しやすくなっているのです。

潜在的に高いコミュニケーション能力を持っているのであれば、実践して鍛えて“ビジネス能力として”伸ばした方が良いのです。
コミュニケーション能力に“稼ぐ感性”を身に付けられれば、年齢関係なく自分が描く働き方で活躍できる人材になることができるのです

7-2. ライフステージを見据えておこう 年代ごとに考えるべきこと

日本という国では女性のキャリア形成において、ライフステージの変化は切っても切り離せません。

結婚、出産、育児、親・親族の介護・・・と大きく4つのライフステージの変化が起こる可能性を秘めています。

ではどんな準備をしておくと良いか、年代ごとにお伝えしましょう。

20代
ベースとなる営業力をつけましょう。活動的に動ける年代です。26,7歳くらいまでは多少プライベートが無視される場合もあるとは思いますが、この時に汗をかいておけば、後々に涙を流すことは少なくなります。ただ、20代後半に入ったら自分のキャリアパスを鑑みて、身に着けるべきスキル・能力に照準を合わせて研鑽を積むと良いでしょう。ライフステージまでの「経験・スキルの貯金」がその後の人生を大きく分けます。

30代
最もライフステージの変化が起こる年代です。変化に適応してその後の人生を落ち着いて過ごせるように整えるのがこの年代です。
人により様々ですが、自身の描いていたキャリアパスや生活環境から離れてしまう場合があります。この場合、元々描いていたイメージに対して意固地にならずに、ぶつかった障壁をクリアすることにエネルギーを向けた方が良さそうです。柔軟な思考と行動で、起こった変化や困難を楽しめるとベストです。

40代
落ち着き始めた生活環境で、どのようなことが出来るか整理した上で20代、30代で培った引き出しを活かして活躍できる場所を探しましょう。自分のライフスタイルにあった職場環境を選ぶことが重要です。
この年代は自分のスタイルによって大きく道が変わります。
また、年齢を武器にできる年代でもあります。20代や30代がいくら話したところで、いまいち説得力に欠けるような商品・サービスを売る営業として活躍も可能です。

7-3. 営業タイプごとに目指すべきキャリアパス

“営業”は一括りで表現されることも多いですが、業界や商材によって営業スタイルは全く異なることは触れてきました。

営業女子・営業ウーマンがキャリアパスを描く上で、自分がどの営業タイプなのかは非常に重要になります。
1-1でお伝えした通り、我々は大きく3パターン(活動型、傾聴型、提案型)に分類しています。(自己PRレポートを受検頂くと明確にわかります)それぞれのタイプごとに、目指すとフィットするであろうキャリアパスを簡単にお教えします。

活動型

アクティブに活動することで、強みを活かせ、収入を生み出せるタイプです。

20代
求人広告事業や広告代理店事業、人材紹介事業・人材派遣事業の営業職が向いており、女性が活躍しやすいフィールドです。少し専門的な領域では、MRやOA機器販売などもあります。

30代
そのまま走れる人は20代のままでも活躍できます。フィールドを変えたいのであれば、それまでに培ってきた経験・スキルを活かして売れている商品や定番商品がある企業や、成長企業の新規事業開拓営業などにチャレンジしても良いでしょう。売れている商品がある企業であれば、勤務時間などをコントロールできる可能性が高いので、結婚や出産を経験されている方に非常に向いています。

40代
少し落ち着きたい人は、BtoC営業に変えて落ち着くのも良いでしょう。化粧品や健康食品などの訪問販売や、教育・英会話などの各種スクールの営業など生活になじみのある商材・サービスであることで自分が売りやすいことに加え、年齢的な説得力が増すため向いていると言えます。

傾聴型

顧客の意図を汲み取ったり、潜在的ニーズを引き出すことで、収入を生み出せるタイプです。実は女性に最も多いタイプです。

20代
BtoBの法人営業では、いわゆる既存顧客向けのルートセールスが向いています。他にも代理店窓口や、卸売り業(問屋)も顧客のニーズを聞き出す点で向いています。

30代
以下は20代でも可能ですが、30代の方が知識量や年齢からくる信頼感から活躍しやすい業界です。自動車販売や銀行業全般のほか、個人資産家向けの営業職として金融証券・保険・不動産運用・物件仕入などがあります。

40代
足を使って稼ぐというよりも、経験や年齢を武器に腰を据えて活躍できるフィールドがあります。結婚相談パートナーや結婚コーディネーターは年齢を武器に活躍できるフィールドです。キャリアコンサルタントやコールセンターでのインバウンド対応やアウトバウンドのリード獲得なども顧客ニーズを引き出す力に優位性のある職業です

提案型

複雑な工程・段取りを経る案件や、高度な課題解決を求められるニーズに対してスピーディかつ的確な解を導き出し提示できるロジカルさを活かすタイプです。
営業職に固執するよりも、経営企画・事業企画やコンサルタント業、管理職を目指すと自分の強みを活かせるでしょう。

20代
B2B向けの無形商材の提案型営業で営業スキルを上げると良いでしょう。複雑な商流が組まれる大手商社やIT業界全般、プラントなどが良いでしょう。有形商材では、アウトバウンドでPB(プライベート商品)提案やOEM提案を行うスタイルが活躍しやすいでしょう。

30代
営業リーダーやマネージャー職を目指すと良いでしょう。企画提案型人材は市場でも少なく、適性を最大限活かせるポジションです。より大型案件を複数の業者でカタチにするポジションも向いています。
生活環境の変化から自由度高く働ける独立・起業で活躍するケースが最近は増えてきています。個人事業主として自分のスキルを活かして、家庭と仕事の両立をするのも良いでしょう。

仕事に対して時間をかけられるようであれば、コンサルティング業界に踏み入れるのも1つです。その場合、ポストコンサル(コンサルタント職に就いた後の働き方)を考えておくことが大切です。

40代
女性管理職は増えてきたといっても、部長職だとたったの5%(内閣府データより)。時短勤務希望者や税金対策で収入を抑えて働いている人が多いのも影響しているようです。
企業側も時短でも可能な体制作りに着手し始めていますので、職場環境を選べば諦める必要はありません。

30代同様、個人事業主として独立・起業も手段の1つです。ビズリーチなどにも登録して、選択の幅を広げておくと、安心でしょう。

~おまけ~ 女性営業職のファッションのポイント 売れる営業ウーマンの服装・髪型とは

営業職の女性から“気になる”とよく問い合わせを頂く、服装や髪型について簡単にポイントをお伝えします。
詳しくは「 必見!女性営業職のおすすめファッション ~売れる営業ウーマンの髪型・メイク・服装・持ち物・必需品~ 」をご参照ください。

営業職に関わらず、勘違いしてしまう人がいますが、ビジネスシーンで必要なのはマナーで、オシャレは不要です。

華やかさが重要な業界を除いて、

●清潔感
●シンプル・ナチュラル感
●年齢に応じた品格

がポイントです。
特に髪型やアクセサリー、香水などには気を付けましょう。

バッグは、持ち物が多くなりがちなので、A4サイズの資料が簡単に出し入れできるサイズで、中で分けて収納できるようなものが良いでしょう。
営業トークやアクションだけでなく“第一印象”からも売れる営業ウーマンを目指してください。